Oct 09, 2017 column

ただの総集編ではない!再構成が新たな感動を生む、劇場版『エウレカセブン』『響け!ユーフォニアム』

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夏映画が終わったかと思えば、はやくも秋映画一色の映画館。アニメ映画もいくつかの新作の公開が始まった。 さっそくその中から、発表時からアニメファンに注目をされていた『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』(9月16日公開)と『劇場版 響け!ユーフォニアム ~届けたいメロディ~』(9月30日公開)の2本を見た。どちらも基本的にTVシリーズの再編集・総集編作品だ。その意味では大きな期待をしていたわけでもなかったのだが、思いがけず、どちらも“構成”の面白さというものを再認識させられた。それは、構成によって物語はここまで大きく変わるのか、印象が別のものとなるのかという面白さだ。

映像作品において“構成”とは物語を生み出す基本であり、演出の基本であり、編集の基本となる。映像系学校のカリキュラムの最初期において行われるものに「いくつかの画を組み合わせて、ストーリー性のある繋がりを作る」というものがある。組み替え次第で映像が生み出す意味も印象も変化する。ざっくりとした説明だが、これが構成だ

『交響詩篇エウレカセブン ハイエボリューション1』は2005年に放送されたTVアニメシリーズ『交響詩篇エウレカセブン』を元に、新規映像もあるものの、基本的にはTVシリーズの映像を組み替えることで構成されている。だが、これを「元に」と記したのは、TVシリーズの映像で構成されてはいるのだが、新たなシナリオとセリフによって全く別個の作品となっているからだ。 エウレカという謎の少女と出会った少年レントンの「ボーイ・ミーツ・ガール+ロボットもの」というコンセプトは変わっていない。だが、TVでは中盤に登場しレントンが身を寄せることになるビームス夫妻は初期から登場し、レントンにとって大きな存在となる役割へと変更されている。そういったことをはじめ、物語そのものを新たな形へと再構成したのがこの作品になる。 09年公開された劇場版『交響詩篇エウレカセブン ポケットが虹でいっぱい』でも同様の手法は用いられ“TVシリーズとは別の宇宙の物語”を生み出していたが、今作はそれをさらに大きなものへと変えようとしている。 物語の変化だけではなく、この作品は展開・進行の構成もかなりの変化球だ。多くの場合“構成”は見る側にとって軸が何であり、「何を伝えたいのか」を明確化することを主眼に組まれていく。アニメやドラマのみならずドキュメンタリーにおいても同様であるし、映像作品だけでなくマンガでも小説でもルポルタージュでもニュース記事などでもそうだ。 だが『ハイエボリューション』はストレートな「コレが起きてアレがあったからこうなっていく」という流れでは見せず、プレイバック・プレイフォワードを多用した時間軸が前後する方法で全編が構成されていく。かつて見たTV版の映像でありながら、鑑賞中に受ける印象は全く別の作品だ。あまりの変化球に見た人の反応は賛否がわかれている。しかしその変化球や、新たに持ち込まれた音楽や細かい演出のちょっとトンガっているその雰囲気は「『エウレカセブン』ってこういうものだった」という根幹を失ってはいないと感じる。TVシリーズと似ていながらも異なる物語がどのような全貌を現すのか。3部作となることもあり、正直この1作目だけではまだ判断が付かない部分も多いが、今後が楽しみな作品だ