Jun 19, 2017 column

スケールモデル市場の救世主!『艦これ』や『ガルパン』が生んだ模型特需

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この降ってわいたスケールモデル好景気がもたらした影響がどれほど大きかったのかは、アオシマの新商品からもうかがえる。例えば、昨冬にアニメ『蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-』の商品として完全新規金型で発売した『霧の艦隊 総旗艦 超戦艦ヤマト』。喫水線の下は同作設定のSFメカ造形となっているが、上部はほぼ戦艦大和のこのキット。『月刊モデルグラフィックス 7月号』の記事によれば、今後はこの商品を元に大人気オンラインゲーム『ファンタシースターオンライン2』に登場する『幻創戦艦・大和』が。さらに今の技術、最新の検証や資料を基にした戦艦大和のフルハルモデルが発売される予定だという。戦艦大和の部分をうまく転用する展開とはいえ、このような大型アイテムは思わぬ特需が起きなければ開発は難しかっただろう。

戦車にしろ艦船にしろ、10年ほど前を思い返したときに、わずか数作のアニメやゲームによってここまで大きく変わることを誰が予想できただろう。 スケールモデルがキャラクターモデルと同じになったとも言えるボーダーレス化の状況は、正直モデラーであっても「10年前の自分に話しても信じない」事態だ。さらに面白く感じるのは、これらの盛り上がりを実現しているのが「同業数社による協力」というところだ。模型以外の分野を見たとき、「この人気をとにかくウチが独占して…」という思惑が市場や盛り上がりを結局しぼませてしまったブームはあまりにも多い。

今のスケールモデル界の、結果として全体が盛り上がってきている流れには学ぶことも多いように思う。10年後、20年後がどうなっているのかは全く予想できないが、しかしいずれ模型史を振り返ったときにこの時期が大きな意味を持っていた時代となるのは間違いない。おそらく現在はスケールモデラーにとって、過去数十年の中で最も商品が充実している。そして、商品が充実し盛り上がっている状況というのは、ビギナーにとっても情報が多く都合が良いということでもある。

『艦これ』人気は続いており、『ガルパン』は全6章となる“最終章”が制作され、本年12月から劇場上映が開始される予定だ。スケールモデルを巡る追い風がまだしばらく続きそうな中、最近は初心者向けのガイドブックもあるし、ネットでも初心者向けの工作を紹介しているサイトも多い。梅雨で外出がおっくうなこの時期、あなたも1つ組んでみてはどうだろう。

文 / 岡野勇(オタク放送作家)