Feb 22, 2024 column

敗者たちこそ1点の重みを知っている 人生の応援歌『ネクスト・ゴール・ウィンズ』

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世界最弱と揶揄された米領サモアのサッカー代表の奮闘を描いた映画『ネクスト・ゴール・ウィンズ』は、明日への元気をもらえるスポーツ・コメディだ。FIFA加入以来、勝利ゼロ、2001年にオーストラリアを相手に31-0の歴史的大敗を喫した最弱チームが公式戦初勝利を目指す。

どん底から這い上がるネクストゴール

サッカーは一つのボールを奪い合い、ゴールを決めればいい。イングランド発祥のスポーツはこのシンプルさが受け、世界の競技人口は2億5000万人。国際サッカー連盟(FIFA)には、国連加盟国の193カ国を上回る211カ国が加盟している。

トライ&コンバージョンキックの合計で7点入るラグビー、満塁ホームランで4点の野球と違って、1点ずつの積み重ねであるため、大差はつきにくいが、時に、信じられない得点差を見せることがある。

それが2001年4月11日、オーストラリア・ニューサウスウェールズ州で2002 FIFAワールドカップ・オセアニア予選として行われたオーストラリア対アメリカ領サモアの31-0だ。約3000人が見守ったこの試合は、ワールドカップ予選史上最大差がついたスコアとなった。

米領サモアは1994年にFIFA公式戦に参戦するも、以来全敗。10年以上、FIFAランキング最下位をキープ。本作は、米領サモア代表が世界最弱と言われた屈辱を晴らすべく、2014年FIFAワールドカップ予選の初勝利を目指す物語。

“次のゴールで勝つ”というシンプルな題名がいい。人間、落ちるところまで落ちたら、もう這い上がるしかない。弱ければ、弱いほど、その落差にドラマが生まれる。

米領サモアは南太平洋ポリネシアに浮かぶ5つの火山島とサンゴ礁からなる人口5万人少しの小国。公用語はポリネシア諸語の一つであるサモア語だが、英語も広く浸透していて、国民の多くがバイリンガル。

サモアと言えば、「マヌ・サモア」との愛称で知られるラグビー代表チームを思い浮かべる人もいるかもしれないが、ラグビーのサモアは「サモア独立国」といい、米領サモアの隣国。二つの国はライバル関係にあるらしい。