Mar 03, 2019 column

ゴラムを創造したWETAデジタルの偉業、『移動都市/モータル・エンジン』での新たな挑戦とは?

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『ロード・オブ・ザ・リング』(01~03年)、『ホビット』(12~14年)のピーター・ジャクソンが製作と脚本を担当し、『キング・コング』(05年)でオスカー視覚効果賞を獲得したクリスチャン・リヴァーズが監督を務めた『移動都市/モータル・エンジン』。“都市が動き、狩り合う世界”を舞台に、希望を求めて戦う少女の冒険が壮大な世界観と圧倒的ビジュアルで描かれている。本作をはじめ、ピーター・ジャクソンが手がけた作品を語る上で欠かせないのが、VFXプロダクションのWETAデジタル。いまや世界トップレベルのVFX技術を持つ同社の功績を振り返ると共に、本作での新たなチャレンジを解説する。

 

暴走する移動都市のエキサイティングな描写

 

現在公開中の『移動都市/モータル・エンジン』は、イギリスの作家フィリップ・リーヴによる冒険小説「移動都市」四部作のうち第一作目(2001年出版)を映画化したものだ。同シリーズを愛読していたピーター・ジャクソンが映像メディアへの置き換えを強く望み、脚本とプロデュースを担当。自らが持つ創造の術を余すところなく発動させ、作品はとてつもなく見応えを含んだものになっている。

 

 

人類をわずか60分で壊滅に導いた量子エネルギー大戦から1000年後。かろうじて生き残った人々は移動する都市を造り、食料や資源を奪い合うディストピアを生み出した。なかでも巨大移動都市ロンドンはクローム市長統治のもと、小さな移動都市を捕捉して資源を吸収し、住民たちはその狩りの興奮に歓声をあげていた。

映画はそんなロンドンを牛耳ろうとする謎の男ヴァレンタイン(ヒューゴ・ウィーヴィング)の野望を阻止すべく、赤覆面の少女へスター(ヘラ・ヒルマー)と史学士見習いの青年トム(ロバート・シーアン)が共闘するアクションファンタジーだ。かつて世界を滅ぼした究極兵器“メドゥーサ”を現代に蘇らせ、世を己が手中にと企むヴァレンタイン。物語はメデューサ復活を阻止する反移動都市同盟との対決へとうねりを上げて加速し、あたかも映画はデス・スターの発動を阻止する『スター・ウォーズ エピソード4/新たなる希望』(77年)のごとき様相を呈していく。ハン・ソロを思わす伝説の空賊アナ(ジヘ)の存在や、彼女が拠点とする空中都市エアヘイヴンは『スター・ウォーズ エピソード5/帝国の逆襲』(80年)のクラウドシティを彷彿とさせるなど、原作準拠でありつつも、かのジョージ・ルーカスの聖典にリスペクトを抱くジャクソンらしいSW度の高まりを覚える。それでなくとも、栄えた古代文明と超兵器の発動を食い止めようとするプロットは『風の谷のナウシカ』(84年)や『天空の城ラピュタ』(86年)など宮崎駿作品のテイストを感じさせるし、そもそも移動都市という要素が既に『ハウルの動く城』(04年)を想起させるのだから、我々日本人としても鑑賞後のリファレンス探しには事欠かないだろう。

 

 

しかし、ジャクソンは『ロード・オブ・ザ・リング』三部作や『ホビット』三部作など、トールキン原作のファンタジー・フランチャイズで培ってきた経験と様式をフル活用し、この『モータル・エンジン』を独壇場ともいえるビジュアル領域へと跳躍させている。特に息を呑むのが、ウルトラ重機もかすむような移動都市の存在感だ。デッドテック(退廃的未来像)な外観と西洋モダンの様式を併せ持つ要塞が、巨大なキャタピラで地面を振動させ、すさまじい轟音と共に大地を激走する。こうしたイメージはパワフルかつ狂気じみたエネルギーの放出量によって観る者を圧倒。そこはもはや、既成の何かでは例え表わすことができない。

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