ビジュアル面で刺激を受けたジャパニメーション
『MEN 同じ顔の男たち』の制作にあたって、アレックス・ガーランドは意外な作品からの影響を公言している。『進撃の巨人』だ。人類が巨人と立ち向かうこのダーク・ファンタジーに、彼はビジュアル面で大いに刺激を受けたという。
「ちょうどプリプロダクションに入るところで、私はあらゆるイメージと格闘し、不安を感じていました。そんなとき、娘が『進撃の巨人』にハマったんです。この作品は様々な面で非常に素晴らしいアニメーションです。感動しました。私が注目したのは、人間の造形を奇妙に描くという点で、非常に巧妙であることです。この作品は実に見事なもので、荒唐無稽の一歩手前まで来ています。荒唐無稽でありつつも、恐ろしくて、奇妙で、威圧的な存在に仕上げているのです」ーーアレックス・ガーランド
(出典:collider.com)
恐ろしくて、奇妙で、威圧的。千鳥のノブ風に言えば“クセの強い”巨人の造形に、アレックス・ガーランドはすっかりヤラれてしまった。『MEN 同じ顔の男たち』の終盤に訪れる悪夢的なイメージは、『狼男アメリカン』(81)や『遊星からの物体X』(82)のような不気味さに満ちているが、その参照元はジャパニメーションだったのである。あらゆるカルチャーにアンテナを伸ばし、あらゆるビジュアルを貪欲に吸収する姿勢に、アレックス・ガーランドの底知れぬセンスをビンビンに感じてしまう。
アレックス・ガーランドは近い将来監督業から引退し、脚本家に専念することを示唆している。何人かの映画監督から、インディーズ映画の執筆を依頼されているというのだ。これだけのビジュアリストがもう映画を撮らないなんて、世界的損失の何物でもないが、致し方ない。まずは、『MEN 同じ顔の男たち』の鮮烈な色彩感覚、悪夢的イメージに酔いしれよう。私たちが彼の映画を味わい尽くす時間は、まだ残されている。
文 / 竹島ルイ
ハーパーは夫ジェームズの死を目の前で目撃してしまう。彼女は心の傷を癒すため、イギリスの田舎街を訪れる。そこで待っていたのは豪華なカントリーハウスの管理人ジェフリー。ハーパーが街へ出かけると少年、牧師、そして警察官など出会う男たちが管理人のジェフリーと全く同じ顔であることに気づく。街に住む同じ顔の男たち、廃トンネルからついてくる謎の影、木から大量に落ちる林檎、そしてフラッシュバックする夫の死。不穏な出来事が連鎖し、“得体の知れない恐怖”が徐々に正体を現し始める。
監督・脚本:アレックス・ガーランド
出演:ジェシー・バックリー、ロリー・キニア、パーパ・エッシードゥ、ゲイル・ランキン、サラ・トゥーミィ
配給:ハピネットファントム・スタジオ
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