Jan 19, 2019 column

『マスカレード・ホテル』が公開!東野圭吾作品の映像化が続く理由とは?

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理系トリック、社会派……と多様性に富む東野作品

 

東野圭吾というミステリー作家の大きな魅力に、作品の多様性が挙げられる。映画化された作品を中心に紹介していくと、大きく分けて3つにジャンル化することができる。まずは“ファンタジー系ミステリー”。事故に遭った母娘の体と魂が入れ替わる広末涼子主演作『秘密』(99年)は、東野圭吾ブームのきっかけとなった。当時19歳だった広末が、官能シーンに挑戦したことでも話題を呼んだ。タイムパラレルもの『ナミヤ雑貨店の奇蹟』(17年)は、山下達郎が提供した主題歌「REBORN」を門脇麦が歌唱するライブシーンが印象的だった。5月公開の『パラレルワールド・ラブストーリー』もこのジャンルに入るだろう。

大阪府立大学工学部電気工学科卒業という理系人間ならではの巧妙なトリックを仕掛けた“理系ミステリー”は、東野圭吾の代名詞となっている。福山雅治が天才物理学者・湯川に扮した「ガリレオ」シリーズ『容疑者Xの献身』(08年)と『真夏の方程式』(13年)はともに大ヒット。2018年に出版されたシリーズ最新作『沈黙のパレード』も傑作との評価が高いだけに、映画化が楽しみだ。

“社会派ミステリー”にカテゴライズされる重厚感のある長編小説も、ファンを魅了してやまない。児童虐待をモチーフにした『白夜行』は、東野圭吾の代表作に推されることが多い。2006年に山田孝之、綾瀬はるかの共演作としてTBSで連続ドラマ化。堀北真希、高良健吾で映画化(11年)。『私の頭の中の消しゴム』(04年)で日本でも人気を博したソン・イェジン主演作『白夜行 白い闇の中を歩く』(09年)として韓国でも映画化されている。少年犯罪を扱った寺尾聰主演作『さまよう刃』(09年)も、やはり韓国で2014年に映画化された。苛酷な状況に置かれた主人公の生き様を追った明快なストーリーテリングから、韓国や中国でも東野圭吾ミステリーは支持率が高い。

 

『祈りの幕が下りる時』(Blu-ray・DVD 発売中) ©2018映画『祈りの幕が下りる時』製作委員会

 

3つのジャンルに分類できなかったが、東野圭吾が新人時代から大事に育ててきたキャラクター・加賀恭一郎を阿部寛が演じた『麒麟の翼 ~劇場版・新参者~』(12年)、『祈りの幕が下りる時』(18年)も人気シリーズとなっている。また、東野圭吾は怪獣映画好きなことがファンには知られているが、原発問題を題材にした『天空の蜂』(15年)を堤幸彦監督は怪獣映画を彷彿させるスペクタル性充分な大作に仕上げていたことも特筆しておきたい。