時代設定によって変わる描写と“恐怖”
さらに時代設定についても触れておこう。もともと原作の出版は1986年なので、現在が84年~85年、過去が57年~58年という設定になっていた。90年版は現在が90年となり過去は60年(なぜかこのバージョンだけ30年周期)、2017年版では過去が89年に変えられた(したがって現在は2016年)。これによって描写がかなり違ってくるわけで、17年版はTVゲーム、ウォークマンでかかる音楽、映画館で上映されている映画タイトル、部屋のポスター、Tシャツのデザインなどで、これでもかの“80年代感覚”を強調してノスタルジーを誘っていた。現代を描く19年版でも、スマホを誰もが当たり前に持っている時勢に合わせて演出が変えられている。
この“基本ラインは同じでもディテールを変えることで新しさが出せる”という柔軟性が魅力で、恐怖シーンでも“ペニーワイズは相手が怖がっているものを見せて恐怖心を抱かせる”“それを見たり感じたりできるのは子どもだけ”という基本設定は守りながら、さまざまに異なる見せ方をしてくる。原作小説の過去編は57年なので、子どもが怖がるのはフランケンシュタインの怪物やミイラ男といった映画の中のモンスターだった。しかし映像化されたものはそれぞれの時代背景に合わせた“違う恐怖”を見せてくれるのだ。したがって原作や90年版を知っている人でも今回の作品を楽しめる仕様になっている。さらに19年版は原作にないエピソードも含まれているので、お楽しみに(出番が削られたキャラクターもいるけれど…)。ただし、17年版のおさらいは含まれていないので、未見の人は事前の予習が必須だ。
ところで、“映画化が難しい”と言われてはいるものの、ベストセラー作家だけあってキング作品は次々と映像化されている。映画では11月29日から『ドクター・スリープ』(あの『シャイニング』の少年が成長した姿を描くもの)が、来年1月17日からは『ペット・セメタリー』(1989年に一度映画化されたもの再映画化)が日本公開されるし、アメリカでは『アウトサイダー』『ザ・スタンド』『ダークタワー』のTVシリーズ化が進行中だ。映像化されたものになんだかんだと文句を言いつつ、結局は観てしまうのがキングのファン気質なのかもしれない。
文/紀平照幸
子どもが消える町に、“それ”は現れる――。小さな田舎町で再び起きた連続児童失踪事件。「COME HOME COME HOME(帰っておいで…)」という“それ”からの不穏なメッセージが届き、幼少時代に“それ”の恐怖から生き延びたルーザーズクラブの仲間たちは、27年前に誓った“約束”を果たすために町に戻ることを決意する。だが“それ”は、より変幻自在に姿を変え、彼らを追い詰めていくのだった…。なぜ、その町では子どもが消えるのか? なぜ、事件は27年周期で起きるのか? “それ”の正体と目的とは? はたして、すべてを終わらせることができるのか――。
原作:スティーヴン・キング
監督:アンディ・ムスキエティ
脚本:ゲイリー・ドーベルマン
出演:ビル・スカルスガルド、ジェームズ・マカヴォイ、ジェシカ・チャスティン、ビル・ヘイダー、イザイア・ムスタファ、ジェイ・ライアン、ジェームズ・ランソン、アンディ・ビーンほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
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公式サイト:http://itthemovie.jp
Blu-ray:2381円(税抜)
DVD:1429円(税抜)
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