それぞれのインディ・ジョーンズがある
私は中学1年のクリスマスシーズンに千葉市内の映画館で2回連続観た。当時、映画館は入れ替え制ではなく、ずっと居続けることができた。この映画を見て、映画界や考古学者を目指した人も多いだろう。『運命のダイヤル』で元ナチス科学者フォーラーを演じたデンマーク出身のマッツ・ミケルセン(57)もその一人だ。北欧の至宝と言われ、ハリウッド作品にも多数出演する彼も「15歳のときに兄と一緒に初めてインディ・ジョーンズを観て、ぶっ飛んだよ。そして、何回も見返したんだ」と語っている。
『運命のダイヤル』は、原点『失われたアーク《聖櫃》』に立ち返った内容になっている。ナチス台頭期の1940年代から、宇宙開発時代の1969年まで、約30年間の因縁と、世界をまたにかけた冒険劇。今回のインディの弱みは、老いであり、過去の過ちである。自由奔放に生きてきたインディにも、最愛の相手へ深い後悔がある。これから見る人の楽しみのために、細かいネタばらしはやめておくが、最終作ならでは、の仕掛け、サプライズキャストもある。
シリーズは、その後のエンタメにも多大な影響を与えた。映画では、キャサリン・ターナー&マイケル・ダグラス共演の『ロマンシング・ストーン 秘宝の谷』(1984年)、ブレンダン・フレイザー主演『ハムナプトラ/失われた砂漠の都』(1999年)、ニコラス・ケイジ主演の『ナショナル・トレジャー』シリーズ、アンジェリーナ・ジョリー主演『トゥームレイダー』シリーズ(2001、2003年)。ほかにも、類似するコミック、ゲームなども数えきれない。洞窟に岩石が転がってくる仕掛けなどは何度目にしたことだろう。
キャスト陣では、子役たちも素晴らしかった。『魔宮の伝説』で戦災孤児のショート・ラウンドを演じたのは、ベトナム出身のキー・ホイ・クァン(51)。『グーニーズ』のデータ役でも好演したが、その後は、アクション映画の武術指導も手掛け、本格的に俳優業を再開した『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』では第95回アカデミー賞助演男優賞にも輝いた。『最後の聖戦』で若き日のインディを演じたリバー・フェニックスも忘れがたい。
『運命のダイヤル』を観ると、シリーズでの出来事、個人的な体験が蘇ってくる。完結してしまった寂しさもあるが、映画は一種のタイムカプセルだ。観れば、熱き思いを思い起こさせてくれるだろう。インディが世界で宝探しを繰り広げる「インディ・ジョーンズ」シリーズだが、このシリーズこそ、最高の宝物だ。インディ最後の雄姿をしっかり目に焼き付けて、全シリーズを見返したい。
文 / 平辻哲也
考古学者で冒険家の主人公インディ・ジョーンズが秘宝を求めて世界中を飛び回りながら、様々な危険や謎に立ち向かい冒険を繰り広げていく、不朽のアドベンチャー・シリーズ「インディ・ジョーンズ」。その全世界待望となる最新作にしてハリソン・フォードにとって最後の作品。
製作総指揮:スティーブン・スピルバーグ、ジョージ・ルーカス
監督: ジェームズ・マンゴールド
出演:ハリソン・フォード、フィービー・ウォーラー=ブリッジ、アントニオ・バンデラス、ジョン・リス=デイヴィス、マッツ・ミケルセン
配給:ウォルト・ディズニー・ジャパン
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