Apr 26, 2024 column

第46回:モンスター・ヴァース10周年目で大輪の花 『ゴジラxコング 新たなる帝国』

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個性的なキャラクターがモンスター・ヴァースを蘇生

この映画で画期的だったのは、ほぼ常時登場してきたシリーズの登場人物が10人から4人にシュリンクされた点。ゴジラとコングを戦わせないように、ゴジラは地球に、コングはホロアースにと二分して、地球の平和のバランスを図ってきた特務研究機関モナークの科学者エレナ。彼女の幼女でイーウィス族の生き残りジーアは、孤軍奮闘しながら、ホロアースで1匹で時間をもてあますコングに共鳴。学校生活になじめずにいたジーアはコングと同様にホロアースの警笛に振起し、エレナの心を動かし、共に調査に乗り出すのである。

陰謀説を追うコミカルな黒人ポッドキャスターのバーニーは、前作で、メカゴジラを製作していた会社APEXの秘密を暴露した元社員。そして新たに怪獣世界との相補関係を深める新キャラが生物学者のトラッパー。彼は動物と対話できるドリトル先生と『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のドクを合わせたような存在で、巨体コングのストレスを観察。コングの治療のために、空飛ぶ外科治療マシンで飛んでくるなど、奇想天外でおもしろい。

もちろん、「モンスターヴァース」の個性は新怪獣登場人物を語らずには始まらない。今までのモンスターヴァースを見たゴジラファンが、もっといろんな怪獣が見たいと欲した夢を叶えるかのように、ゴジラとコングの共通の敵スカーキングが登場。ホロアースの惑星猿軍隊を率いて攻撃してくるシーンなど、卑劣な怪獣の姿はある意味、暴君の下で耐える人間世界のようで見応えがある。

さらに、キングコングに無我夢中で体当たりするベビー・コングのスコもまた、コングの小さいときはこうだったではと思わせるような、物語の核心に触れる大事な要素となっている。監督アダム・ウィンガードは、今作を作るにあたって、子供のときになぜゴジラ映画に夢中だったかを思い出し、怪獣同士が戦うだけでなく、怪獣同士の友情など子供の心を掴み、大人の子供心に触れる感動を今作で呼び起こすことを心がけたという。核開発という人間の罪を背負うゴジラが安らぎをもとめてローマのコロッセオに丸く横たわるなど、愛される怪獣は世界遺産との相性もいい。そんなゴジラとコングは本当に敵同士なのか? ゴジラ70周年にふさわしいこの『ゴジラxコング 新たなる帝国』。現在、世界を股にかけて大健闘している。

文 / 宮国訪香子

映画『ゴジラxコング 新たなる帝国』 

怪獣と人類が共生する世界で、未確認生物特務機関:モナークが察知した異常なシグナル。ついに一線を越えるゴジラとコングの激突のその先には、人類が知る由もなかった未知なる脅威が待ち構えていた。

監督:アダム・ウィンガード

出演:レベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ダン・スティーヴンス、カイリー・ホットル、アレックス・ファーンズ、レイチェル・ハウス、ファラ・チェン

配給:東宝

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2024年4月26日(金) 公開

公式サイト godzilla-movie

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。