Feb 01, 2022 column

第4回:ハリウッド黄金期からの飛躍 アカデミー映画博物館

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第94回アカデミー賞の発表を来月8日に控え、去年2021年9月30日(現地時間)にオープンしたアカデミー映画博物館は週末予約がとれないほど、映画ファンが集まっている。最初のオープン予定(2017年)から2年遅れ、そして当初予定していた2019年からコロナ渦でさらに約2年の歳月が過ぎ、開館当時の博物館の展示内容の評価もまちまちで、不透明なスタートだった。しかし、今年に入り、オミクロン株対策も万全。時間予約制、ワクチン証明書を提示しての入館もスムーズになり、カフェやギフトショップも充実してきた。

外観でまず目を引くのが建物の巨大ドーム。ロサンゼルス市内を一望できる、キューブ型展望フロアはハリウッドサインも見える絶好の景観で、インスタ映えすることは間違いない。その下には音響設備の整った映画館が設けられ、2月はアンディ・ウォーホルのカルト映画リバイバル、3月は『ゴッドファーザー』の50周年ということでシリーズ三部作上映+フランシス・フォード・コッポラ監督のQ&Aと、コアな映画ファンのニーズを満たしてくれる。去年11月、ケネス・ブラナー監督の自伝的映画『ベルファスト』のプレミア上映とパーティーも行われるなど、大手スタジオのイベントも今後、多く発信するようになっていくのかもしれない。

オスカー・エクスペリエンス

館内の展示フロアは全5階と地下のミニシアター。そしてロビー・レベルでは「映画の物語」と題した導入があり、白黒映画から現在までの世界中の映画がスクリーン別に見れるラウンジがある。その横にはお洒落なカフェとミュージアムストア。ハリウッド映画、オスカーグッズの他に、俳優ブルース・リーのかわいいグッズなどが売られていたりと白人以外のスターを意識した品揃えが目につく。それもそのはず、アカデミー協会のミッションはグローバル。2015年ハッシュタグ#OscarsSoWhite(白人ばかりのアカデミー賞)の非難を受けて以来、協会メンバーを増やして多様化をめざしているアカデミー協会の意向が反映されているのである。

2階には赤絨毯を思い起こさせるソファの前にオスカー像が立ち並び、さらにはアカデミー賞受賞スピーチが帯状に放映され、オスカー像を手にした映画関係者の感動の瞬間が繰り広げられる。『チョコレート』で主演女優賞を受賞した涙のハル・ベリー、『ソフィーの選択』の美しいメリル・ストリープ、『シンドラーのリスト』で監督賞を受賞したスティーブン・スピルバーグ、『ドラキュラ』で衣装デザイン賞を受賞した石岡瑛子、そして1962年に『ウエスト・サイド・ストーリー』で助演女優賞を受賞したリタ・モレノと、懐かしい場面や、見たことのない貴重な映像が次々と繰り広げられる。

日本でも来月公開のスピルバーグ版ミュージカル映画『ウエスト・サイド・ストーリー』にも現役で出演した現在90歳のリタ・モレノ。当時アカデミー賞で着たドレスを2018年の授賞式でも着用し、プレゼンターとしてラテン系俳優のパイオニア的存在をアピールしていた。さらに、入場料とは別料金で入れるのがオスカー・エクスペリエンス。拍手喝采の観客を前に本物のオスカーを手にとり、自らの挨拶を動画におさめるというアカデミー賞を受賞したような模擬体験映像がゲットできることで人気である。

(左)アカデミー賞受賞者スピーチが繰り広げるフロア (右)ロビー・レベルの「映画の物語」