Apple TV+ のアメリカでの立ち位置
2019年、オリジナル作品のみで他社と競合した、挑戦的なApple TV+。全米での月額会費はあきらかに安く、4年目に入った今のラインナップはアップルスタジオによるオリジナル映画、そしてドラマシリーズも秀作が増え、アカデミー賞ベストフィルムの『コーダ あいのうた』他、クリティックス・チョイス賞話題のTVシリーズ「テッド・ラッソ:破天荒コーチがゆく」「Pachinko パチンコ」など、感動作、コメディ、ベストセラー原作シリーズ、ドキュメンタリーも含め、ラインナップは幅広い。視聴者はApple TV+を所有する古くからのアップルファン、SF、社会派ドラマに興味を持ち、大河ドラマ好きなど、じっくりドラマを観て語り合いたい視聴者層に人気といえる。上記に挙げた作品のほかにユニークな作品でおすすめなのが、SFシリーズ「セヴェランス」。
コロナ禍で、家と会社の往復がなくなって人生を考え直した米サラリーマン層に人気が高かったこのシリーズは、コメディアンのベン・スティラーが率いる製作チームの意欲作。ある町の製薬会社は奇妙な雇用ルールを掲げ、正社員になるために「セヴェランス」という外科手術を受けなくてはならない。それは勤務時間と私生活の記憶を分離させられ、会社の建物を出た途端、仕事の記憶を一切保持しないという脳手術。主人公マークは妻と死に別れ、一日中悲しみで鬱になっていたため、家族の反対を押し切ってその手術を自ら受けて就職。ある日、元同僚が私生活に現れ、会社の同僚だったことを説明。居場所がないのでしばらく滞在させて欲しいと頼みこむ。私生活の記憶がないはずのマークだが、勤務中の同僚の写真を通して潜在意識が刺激され、私生活に現れた男が同僚であることを職場で認知してしまう。その同僚から会社の秘密を知るマークは、同僚の死、そして、とんでもない組織の陰謀に巻き込まれていく。この職場コメディ・心理ホラーもシリーズ2が待望されている。さらに、この秋公開の映画『キラーズ・オブ・ザ・フラワームーン』も、Appleスタジオがアカデミー賞をねらうスコセッシ監督の期待作で、10月20日に世界同時劇場公開。
主演はレオナルド・ディカプリオ、そして往年のロバート・デ・ニーロが白人悪役に徹し、実力派俳優で固められる社会派映画。米作家デイヴィッド・グランのベストセラーが原作で、アメリカ先住民のオーセージ族の富に目をつけた白人たちの(陰謀)と、先住民の妻と暮らす白人アーネスト・バークマンの実話が基になっている。
Apple TV+の映画、そしてドラマのラインナップはこの秋の読書とともに楽しめる秀作で溢れている。
文 / 宮国訪香子
有毒物質が蔓延する荒廃した未来。何千人もの人間が地下深くに広がる巨大なサイロで暮らしている。保安官が基本的な規則を破り、住民たちが謎の死を遂げる中、機械工のジュリエットはサイロの驚くべき秘密と真実を解き明かしていく。
制作総指揮:レミー・オプション、フレッド・ゴラン、ヒュー・ハウイー、ニナ・ジャック、レベッカ・ファーガソン、グレアム・ヨスト
原作:ヒュー・ハウイー「ウール」(角川文庫)
出演:レベッカ・ファーガソン、ラシダ・ジョーンズ、デヴィッド・オイェロウォコモン、ティム・ロビンス、アビ・ナッシュ、リック・ゴメス
AppleTV+にて配信中
配信サイト tv.apple.com/jp/