Feb 10, 2023 column

第25回:作り手のレガシーが息づく!「キャシアン・アンドー」と爽快怪奇な「ウェンズデー」

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『アダムス・ファミリー』のレガシーが蘇るドラマシリーズ「ウェンズデー」

90年代に一世風靡した映画『アダムス・ファミリー』のスピンオフ、「ウェンズデー」がネットフリックスで世界配信されている。去年暮れから初春にかけて大ヒットし、シーズンのリニューアルが決定したシリーズの初ドラマ監督を手掛けたのは『エドワード・シザーハンズ』や『スリーピー・ホロウ』など、独特なゴシックテイストで人気のある映画監督ティム・バートン。

映画『アダムス・ファミリー』は、そのあと続編、アニメシリーズ、ミュージカルへと続いた人気コンテンツ。このドラマシリーズでは、アダムス家の一人娘ウェンズデー・アダムスが主人公となって、10代後半の青少年、ヤングアダルト層に向けて制作されている。全8話で構成されていて、外見の不気味さとは相反して、大人も子供も楽しめるシリーズとして人気がある。

映画監督ティム・バートンの心をゆさぶったドラマの脚本は、既存のキャラクターIPに新風を吹き込むことで有名な脚本家アルフレッド・ガフとマイルズ・ミラーのコンビ。チームはもともとアダムス・ファミリーの大ファンで、2人とも高校生の娘がいる父親。思春期の女子高校生になったウェンズデー・アダムスを主人公に設定し、アダムス家から切り離して描くために、舞台を全寮制の怪寄宿学校に通わせることで合意。多少、ハリポタのゴシック感に似た世界観だが、ダークユーモアと、ヤングアダルト向けに恋愛ありきで、初回から夢中にさせる。

シリーズの成功をもたらしたのは主人公ウェンズデー・アダムスを演じる若手女優ジェナ・オルテガ。一見、不気味な黒装束のようなファッションをまとい、反抗的な外見とは相反して、弟思いで弱いものの味方という魅力的な主人公を演じている。ディズニー・チャンネルの子供向け番組「スタック・イン・ザ・ミドル(原題)」の子役スターとして9歳からテレビ番組の主人公を演じるほどの子役トップスターで、ラテン系アメリカ系のカリフォルニア・ガール。

ウェンズデー・アダムスとして彼女が演じた奇妙なダンスは、レディ・ガガや著名なスターがソーシャルメディアで真似するほど話題になり、シリーズの顔としてセンセーショナルな幕開けを担っている。

魔女の血を引く妖艶な母役で登場するのが、映画『マスク・オブ・ゾロ』で有名だったキャサリン・ゼタ=ジョーンズ。一家の当主、父親ゴメス役には、『ブラック・レイン』など、悪役やコメディで引っ張りだこのプエルトリコ出身俳優ルイス・ガスマン。映画版『アダムス・ファミリー』の無表情で冷徹だった少女ウェンズデー役を演じたベテラン女優クリスティーナ・リッチもカメオ出演していて脇役は豪華。そのほか、次世代ハリウッドを担う若手俳優が大勢出演している。

アダムス・ファミリーはもともと、1938年から雑誌ザ・ニューヨーカーに掲載されていたダークユーモアあふれる一コマ漫画が原案。漫画家チャールズ・アダムスのイラストは人気を博し、1964年のテレビ番組化をもとに、それぞれ、アダムス家の登場人物が、今の名前になったそうだ。(参考リンク:【THE NEW YORKER】THE ADDAMS FAMILY SECRET)

ネットフリックスの新ドラマシリーズでは、不気味な屋敷の代わりに、怪奇なゴシック調の寄宿舎が舞台となっていて、撮影はルーマニアのブカレストなど、東欧のお城がロケーションに使われている。いたずら好きな弟パグズリー、執事のラーチなどお馴染みのキャラも出演している中、自在に動き回る“ハンド(手)”(英語版では“The Thing”)が、ウェンズデーの従者のような存在で彼女の危機を助け、その奇妙でお茶目な存在感は抜群。

“ハンド”はCGなのかと思いきや、実はマジシャンのビクター・ドロバントゥというルーマニア出身男性の実際の手の演技で、このドラマで俳優デビュー。映画なみに凝った趣向で楽しませてくれるこのドラマシリーズは娯楽性抜群である。

文 / 宮国訪香子

作品情報
ディズニープラス「キャシアン・アンドー」

“スター・ウォーズ最高傑作”と評される「ローグ・ワン」 で、冷静沈着な情報将校として命懸けのミッションに挑んだキャシアン・アンドー。彼はいかにして反乱軍のヒーローになったのか?「新たなる希望」の5年前、帝国軍の恐怖に支配された時代を舞台に、シリーズ史上初のスパイ・スリラーが幕を開ける。

監督:トニー・ギルロイ

出演:ディエゴ・ルナ、ステラン・スカルスガルド、ジュネヴィーヴ・オーライリー

©2022 Lucasfilm Ltd.

ディズニープラスにて独占配信中

公式サイト disneyplus.disney.co.jp/program/cassian_andor

Netflix シリーズ「ウェンズデー」

世界的人気作「アダムス・ファミリー」 に登場する、長女“ウェンズデー”。ティーンになったウェンズデーを主人公に、彼女が学生生活に奮闘しながら、自分の一族に まつわる殺人ミステリーに巻き込まれていく姿を描く。

監督・製作総指揮:ティム・バートン

出演:ジェナ・オルテガ、キャサリン・ゼタ=ジョーンズ、ルイス・ガスマン、アイザック・オルドネス、クリスティーナ・リッチ

Netflixにてシーズン1独占配信中

公式サイト netflix.com/title/81231974

宮国訪香子

L.A.在住映画ライター・プロデューサー
TVドキュメンタリー番組制作助手を経て渡米。 ニューヨーク大学大学院シネマ・スタディーズ修士課程卒業後、ロサンゼルスで映画エンタメTV番組制作、米独立系映画製作のコーディネーター、プロデューサー、日米宣伝チームのアドバイザー、現在は北米最大規模のアカデミー賞前哨戦、クリティクス・チョイス・アワードの米放送映画批評家協会会員。趣味は俳句とワインと山登り。