記録的豪雨が続いたカリフォルニア州の新年が明け、雨雲からようやく晴れ間が見られた今月15日(現地時間)、第28回クリティクス・チョイス・アワードの授賞式が開催された。著名なスターが大勢集まったフェアモント・センチュリー・プラザのパーティ会場は外気とは対照的に熱気でいっぱい。出席者は新型コロナウィルスのワクチン摂取証明、PCR検査陰性証明書を事前に提出するという参加規則。ほぼ全員がマスクなしで、正常に授賞式が行われ、映画、テレビの総まとめを祝う大イベントとなっていた。
全米、カナダを含む最大規模の放送映画批評家協会が選ぶクリティックス・チョイス賞。アカデミー賞前哨戦として、その確率に拍車をかけたと、米インディワイヤー誌が3月12日(現地時間)に行われるアカデミー賞授賞式の傾向について記事にしている。(参考リンク:As Oscar Voting Wraps Up, the 2023 Critics Choice Awards Provided a Key Boost for Some Contenders)
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放送映画批評家協会員が選んだトップ作品は、映画部門が通称エブエブこと、『エブリシング・エブリウェア・オール・アット・ワンス』。この連載コラムの20回目でその内容に詳しくふれているが、この映画は全米で大ヒットしただけでなく、作品賞、監督賞、助演男優のキー・ホイ・クァンほか、編集、脚本の5部門で受賞したのである。
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主演女優賞に選ばれたのが、すでに『アビエイター』、『ブルージャスミン』でオスカーを2度手にしているベテラン女優ケイト・ブランシェット。映画『TAR/ター』はトッド・フィールド監督が描いたサイコドラマで、有名女性指揮者の類稀なる才能と、暴君的な冷たい人間性を生々しく描いた作品。クリティクス・チョイスでは音楽を作曲したヒドゥル・グドナドッティルもスコア部門で受賞している。
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テーマソング賞を受賞したのはインドのアクション大作『RRR』。アカデミー賞外国語映画賞のインド出品作品は現在、日本でも公開している映画『エンドロールのつづき』なので、このクリティクス・チョイス賞の外国語映画賞受賞に監督やスタッフは大喜び。『RRR』はアメリカでの劇場公開の成果のもとに、アカデミー賞作品賞やテーマソングで競えるのではと噂されている。
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アカデミー賞の期待がかかる主演男優ブレンダン・フレイザーと映画『ザ・ホエール』
クリティクス・チョイスの主演男優賞にノミネートされていたのが、『トップガン マーヴェリック』のトム・クルーズ、『エルヴィス』のオースティン・バトラー,『イニシェリン島の精霊』のコリン・ファレル、『生きる LIVING』のビル・ナイ。
見事、主演男優賞を授賞したブレンダン・フレイザーは、受賞スピーチで、俳優業を営むなかで導いてくれた監督たちに感謝をのべたあと、「この映画のチャーリーのように肥満症や、暗い海の底にいるような状態ならば、勇気を振り絞って一歩踏み出してください。あなたでも出来るんです。その重い腰を上げて光の当たる場所に踏み出せば、必ず良いことが起こります。」と受賞の喜びに昂りながら涙し、ほぼ全員がスタンディング・オベーションで彼の受賞に賛同していた。