シリーズ3は主役がガラッと変わって、演技力女優オリヴィア・コールマンが主役を演じている。2019年のシリーズ3の舞台は1964年から1977年。エリザベス女王が「自身の最大の後悔」と語ったことでも知られる、イギリス炭鉱の炭鉱の町アバーファンの崩落事故で潰された、小学校の子供達が大勢亡くなった際の女王の胸中が描かれるなど、今まであまり知られていなかったエリザベス2世の責任問題などがエピソードに織り込まれている。さらには、強い母、女王の下で、自らの存在を模索するチャールズ皇太子の姿が良心的に描かれているところも見どころで、英国俳優ジョシュ・オコナーが好演。
翌年2020年のシリーズ4には、女王にチャレンジする2人の女性が登場。ダイアナ妃とマーガレット・サッチャー首相である。ダイアナの役をフレッシュに演じるのが英国女優エマ・コリン。若きダイアナがチャールズ皇太子に恋におち、王妃になる前後の時代が描かれ、現在、国王になったチャールズ皇太子と母のエリザベス2世の親子関係、対ダイアナ妃という姑関係など、複雑で、冷たい王室の雰囲気を匂わせる。
「鉄の女」の異名をもつサッチャー首相の役には、ヒットTVシリーズ「X-ファイル」のFBI捜査官スカリーでおなじみのジリアン・アンダーソン。女王に劣らない威厳でせまり、シリーズの顔として君臨している。エリザベス2世が私生活とのバランスがとれていたように見える理由は、趣味の乗馬にあったのではと思わせるほど、最愛の馬とかかわっているシーンはのどかで美しい。緑の丘々が広がるイギリスの田舎の風景や中世のお城なども魅力である。
ちなみに、オリヴィア・コールマンは映画『私が愛した大統領』(12)の中で、エリザベス2世の母、ジョージ6世の母エリザベスの役も演じ、ヨルゴス・ランティモス監督作品『女王陛下のお気に入り』(2018)では18世期イギリス、スチュアート朝最後の君主、アン女王役でアカデミー主演女優賞を受賞し、女王の役では引っ張りだこと言える。