May 17, 2022 column

第11回:ハリウッド・イン・ニューヨーク

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今月5月1日からマスク着用のみで鑑賞できるようになったニューヨークのブロードウェイ・ショー。新型コロナウィルスの影響で1年以上休演していたブロードウェイ界隈には41の劇場があり、約10万人が職を得ていた。年間で約148億ドルという経済効果を取り戻さんと、去年の夏以降から上演を開始した劇場もあったが、順調に進みはじめたのは先月中旬からである。

海外からの観光客も徐々に増え始め、多くのハリウッド・スターがブロードウェイの舞台やミュージカルに出演して、米国内の観光はもとより、エンタメ産業を盛り上げている。来月6月12日(現地時間)におこなわれるトニー賞にノミネートされているハリウッド・スターも多く、ミュージカル6部門にノミネートされているリバイバルの「ザ・ミュージック・マン」主演のヒュー・ジャックマンも主演男優賞にノミネートされ、その歌と踊りでコロナ禍を吹き飛ばしてくれそうだ。

第11回:ハリウッド・イン・ニューヨーク
「ザ・ミュージック・マン」©Julieta Cervantes
第11回:ハリウッド・イン・ニューヨーク

トニー賞のドラマ部門最有力候補「リーマン・トリロジー」

ハリウッド・スターが映画やテレビの境界線なく活躍しているように、映画監督も一つのメディアだけにはとどまっていない。現在、トニー賞ドラマ部門で最多6部門8ノミネートされている舞台「リーマン・トリロジー」の舞台監督は、アカデミー賞作品賞も受賞した『アメリカン・ビューティー』のサム・メンデス監督。ロンドンのナショナル・シアター上演時にはチケット完売を記録し、NYブロードウェイでの公演、そして今春、ほぼオリジナルのキャストでロサンゼルス公演し、連日満員の大盛況だった。

第11回:ハリウッド・イン・ニューヨーク
「リーマン・トリロジー」 ©Craig Schwartz Photography

舞台はウォール街のオフィスの一室から始まり、19世紀にリーマン・ブラザーズ3兄弟が3世代にわたってウォール街の米金融エンパイアを築いたという、いわば西側諸国の資本主義の始まりを描いている。2018年のリーマン・ショックはいまだに記憶に新しい世界規模の経済危機。舞台セットの背景となる大スクリーンでは、大西洋の荒波を超えてやってきた独移民兄弟の米アラバマ州の綿畑、そして南北戦争と、物語の背景となる米国の歴史が分かるスタイリッシュな映像で演出。

その光と影をシネマテイックに動かす舞台は、ビヨンセやレディー・ガガなどのステージデザインでも定評のある英国舞台デザイナー、エス・デブリンが手掛けている。リーマン兄弟を演じるのが英国演劇界の鬼才サイモン・ラッセル・ビール。長身で「The Great  ~エカチェリーナの時々真実の物語~」など、味のある脇役を演じていたアダム・ゴドリー。そして俳優ベン・マイルズは8月に日本で公開の『ジョーンの秘密』で、女優ジュディ・デンチが演じるKGBスパイという過去を持つ英国老女の息子役を好演している。

ジェームズ・ボンド役を引退したダニエル・クレイグの舞台「マクベス」

『007/ノータイム・トゥ・ダイ』で6代目ジェームズ・ボンド役を卒業したダニエル・クレイグ。3月末からプレビューがはじまったシェイクスピア4大悲劇「マクベス」で、関係者ともに新型コロナウィルスに感染されたと報道され、一時休演となっていたが、先月中旬から順調に公演がスタートし、生のクレイグを見たいファンが押し寄せている。共演しているのが、『ラビング 愛という名前のふたり』でアカデミー賞主演女優賞にノミネートされていたルース・ネッガ。エチオピア系アイルランド人の女優であるネッガは舞台経験も豊富。

クレイグも舞台出身で子供のときからミュージカル「オリバー!」などで演技を磨いていたそうだ。007の大役後に舞台に復帰し、リフレッシュしながらもコロナ禍中、ネットフリックスが続編契約した大ヒット映画『ナイブズ・アウト/名探偵と刃の館の秘密』2作目の撮影完了。名探偵ブノワ・ブランという新たな映画シリーズの顔として、年末、スクリーンに登場するようである。

第11回:ハリウッド・イン・ニューヨーク
「マクベス」 ©Joan Marcus