天気に恵まれた2024年GWいかがお過ごしでしょうか。ご旅行におでかけされる方はちょっとしたすき間時間に映画を、お家でゆっくりお過ごしの方はドラマシリーズを、この機会にNetflixで一気見してみませんか?
SF界のノーベル文学賞”と言われるヒューゴー賞をアジア圏の作品として初めて受賞し、世界で2900万部以上を売り上げた大ベストセラー小説をNetflixがその豊富な資金力をもって実写映像化。しかも手掛けるのは2010年代海外ドラマの覇王「ゲーム・オブ・スローンズ」のクリエイター陣、ということで配信前から話題となっていた本作。
ただ「なんだか難しそう」「原作を読んでいないとわからないんじゃ?」といった声も聞こえるが、そんなイメージだけで敬遠してしまうなんてもったいない!
Netflix版「三体」は”小難しい理屈系SFのフリをした、超エンタメSFミステリー大作”だからだ。往年の海外ドラマファンには、J.J.エイブラムス製作の「FRINGE/フリンジ」に近いと言えば伝わるかもしれない。
物語は1960年代、中国の文化大革命から始まる。父を革命の闘士たちになぶり殺しにされ、世界に絶望した天体物理学者・葉文潔。遥か遠方の何者かとの交信に成功した彼女は、「征服に来てくれ」とのメッセージを送る。
変わって現代、世界的科学者・物理学者が謎のカウントダウンを書き残して死亡するという怪事件が頻発する。葉文潔の娘にしてオックスフォード大学の教授、ヴェラも自殺。これを発端にヴェラの才能豊かな教え子、ジン、オギー、ソール、ジャック、ウィルの通称“オックスフォード・ファイブ”が集結し、そこに加え事件を追うウェイドとその部下・ダー・シーが接触し、協力を要請。ヴェラが死亡前、電源もモニタもコネクタもない謎の未来的ハードでプレイする、ヴァーチャル・ゲームにハマっていたことを突き止めたジンとジャックもまた、そのゲームの虜となってゆく。
時を同じくして、カメラに映らない殺人者、ウインクする星空、粒子加速器の暴走など今までの科学を全否定するような不可解な事件が続々発生。だがそれらは、これから400年先の人類の存亡をかけた一大事の始まりにすぎなかったのだ。
本作は「ゲーム・オブ・スローンズ」で愛憎複雑に絡み合う人間関係を見事に描ききったデヴィッド・ベニオフとD.B.ワイスらが制作総指揮を担当。当然、彼らの丹念に描かれる人間ドラマも見どころのひとつだ。
人に裏切られ続けた葉文潔が世界に絶望を覚えていく過程は同情を禁じえないし、世界規模の大事件に巻き込まれて変わりゆく、オックスフォード・ファイブの関係からは目が離せない。なかでもメンバー中もっとも内気で、実はロマンチストなウィルが同窓生ジンに抱く、密かな恋心の行方には注目だ。シリーズ最終盤で、その片思いが正に宇宙的スケールで昇華される様は、ぜひ見届けてほしい。
この「三体」という言葉は「相互作用する3つ(三体)の天体の運動を解明する」という天体力学・物理学の世界では超メジャーな難問「三体問題」に由来する。この難問、ニュートン以降400年に渡って多くの天才たちが挑んできたにも関わらず、厳密な解はいまだ得られていないそうだ。
そんなことは理解できなくとも、このドラマを視聴する上でなんの問題もない。葉文潔がコンタクトを取った何者かの仮称が“三体人”というのだが、それだけ押さえられればオッケーだ。
他にも例えば2話の人間コンピューターは、何を根拠にそれが動作するのか、5話のデータ強奪作戦は、どういう理由でその作戦が選ばれたのか、少なくともこのNetflix版を観ただけでは、理屈がわからない。だがそれでいい。原作を大胆に脚色したNetflix版は、エンタメに振り切り、全8話とコンパクトにまとめる必要性もあってか、“理屈”の部分はほとんど語られない。あくまで娯楽作として、その壮大な世界観と圧倒的ヴィジュアルに(ヴァーチャル・ゲームにハマッた登場人物たちのごとく)没入する、それこそがこのNetflix版の正しい楽しみ方と言える。 そう。Netflix版は原作小説への入り口としても最適なのだ。
文 / 編集部
迫り来る異星文明の侵略に直面する人類を、時代や国境を越えて壮大に描き出す SF叙事詩。人類に絶望したひとりの科学者の“ある行動”が数十年後、“地球滅亡”の引き金となり、現代科学では説明のつかない自然現象、そして異星文明の襲来が訪れる。
製作総指揮:デヴィッド・ベニオフ、D・B・ワイス
出演:ベネディクト・ウォン、リーアム・カニンガム、エイザ・ゴンザレス、ジョナサン・プライス、ジョン・ブラッドリー
Netflixにて世界独占配配信中