Apr 29, 2018 column

りぼん、別マ、花とゆめ――90年代、夢中になった少女コミック誌の魅力&人気作を解説

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等身大&リアルな高校生の恋愛模様が描かれる『別冊マーガレット』

 

もうひとつの人気漫画誌は『りぼん』よりもターゲットの年齢層が高かった『別冊マーガレット』だ。アジア各国でも実写化されるほど圧倒的な人気を誇る、多田かおるによる未完の名作「イタズラなKiss」では、頭脳明晰、端正なビジュアル、そして多少の“S”という、現代も引き継がれるイケメンの要素をふんだんに取り入れた作風で大ヒット。さらに、河原和音の「先生!」も、先生と生徒という禁断の関係の恋を描きつつ、人間同士の恋愛とは何なのかということを教えてくれた。当時、実際に先生に片思いをしていた女子高生たちにとっては、心の支えになったことだろう。手が届きそうで届かない、そんな切なくも苦しい想いを上品に描いていた。さらに、きらの「まっすぐにいこう。」は、飼い犬の目線から描かれるうぶな高校生同士の恋愛を鮮やかに描き、アニメ化もされた。

『別マ』の連載作品は、『りぼん』に比べ、高校生のリアルな恋愛模様が描かれていたように感じる。リアルな描写が多いからこそ、90年代の若者が手にしていたポケベルやPHSなども、いち早く作品の中に反映されていた。激動の時代背景によって登場するアイテムが変わっていくのも、90年代コミックの面白いところだろう。

 

社会現象を巻き起こした90年代の作品群が、今もなお愛される理由

 

90年代は、「東京ラブストーリー」や「ロングバケーション」などのトレンディドラマの全盛期。キラキラした恋愛が描かれ、誰もが憧れた作品のほかに、野島伸司が脚本を手掛けた、全体的に閉鎖的な空気を持つ「人間・失格~たとえばぼくが死んだら」や「家なき子」(野島は企画・原案を担当)、「未成年」「聖者の行進」などが社会現象になるなど、エンターテイメントの宝庫だったようにも感じる(「101回目のプロポーズ」も野島伸司が脚本を務めている。作風のギャップは、さすがの一言)。SNSがない時代だからこそ、自分で発信できるツールがなく、メディアが作り上げたアイドルやアーティストがすべてだった。だからこそ、こんなにも人気作品が集中したのだろう。さらに、自分が見たものしか信じられない世界だったからこそ、強固になっていた人間同士の関係や恋愛などが描かれ、20年余り経った今でも、90年代の作品が愛され続けているのかもしれない。

時代とともに変化していく少女マンガ。王道作品であっても、どんどん内容は変わっていくもの。90年代、夢が詰まったラブストーリーや古き良きファンタジー色の強かった『りぼん』作品や、今でも共感できる等身大の恋愛を描いた『別冊マーガレット』作品を、今改めて読み返し、楽しんでみてはいかがだろうか。

文/吉田可奈

 

『ママレード・ボーイ』吉沢亮インタビュー はこちら

 

 

作品情報

 

映画『ママレード・ボーイ』

公開中
配給:ワーナー・ブラザース映画
©吉住渉/集英社 © 2018 映画「ママレード・ボーイ」製作委員会