高密度のリアルな人間描写、誰が死んでもおかしくない予測不能な緊張感
その中毒性が何かと言えば、HBO作品らしいエログロ満載でタブーのない描写がひとつ挙げられる。シビアな戦国の世界に“甘さ”は一切ない。陰謀と駆け引きが横行する熾烈な玉座争いの中では、善人であろうと老人であろうと子どもであろうと悲劇が襲い掛かってくるが、本作はその描写に容赦がない。この“人間”を描く事こそ「ゲーム・オブ・スローンズ」の最大の魅力。多くの登場人物がいながら記号的なキャラクターはほとんどなく、脇に至るまでその人物の人間性をしっかりと描きこんでいる。だからこそ単純に切り分けられる善悪もない。そんなリアルな人間ドラマはシーズンを重ねるほど密度を増していく。
第一章では、玉座争いに巻き込まれる北部総督ネッド・スタークとのその一家、双子の弟ジェイミーと関係しながら、その子どもを王の子として育てるラニスター家出身の王妃サーセイ、彼女のもう一人の弟で小鬼と揶揄されるティリオン、兄の野心の犠牲になって野蛮な騎馬民族に嫁入りさせられる前王家ターガリエンの末裔デナーリスといった面々が、それぞれの思惑の中で玉座を巡る争いに身を投じていく。敵と味方が入り乱れ、ツイストしていくそのストーリーテリングは、第九話でその予測不能感を決定付ける。キャストですら驚いたというその衝撃展開は、まさにテレビシリーズの常識を覆すもの。これによって「ゲーム・オブ・スローンズ」にはこれまでのドラマの常識は当てはまらない、いつ、誰が命を落とすか分からないという緊張感が生まれ、同時にこれほど濃密な物語が展開されていながら、それがまだほんの序章でしかなかった事を痛感させられるのだ。
第二章に入り、玉座争いの火蓋が本格的に切って落とされると、スターク家、ラニスター家&現王家のバラシオン家だけでなく、王の弟だったスタニスとレンリー、そして海賊でもあるグレイジョイ家も王に名乗りを挙げ、五王の戦いへと発展していく。そこに上手く王家を操ろうとタイレル家も参入し、玉座争いだけでなく、王妃の座を巡る女たちの戦いも次第にクローズアップされてくる。スターク家の子どもたちは散り散りになり、幼い子どもたちがこの戦国の世をどのように渡っていくのかも、ドラマの見どころのひとつになった。
第三章ではまた大きな悲劇が待ち受けるが、これもまた、積み上げてきた人間ドラマがあればこそ、胸に迫るものがある。この段階ですでに玉座争いは混迷を極め、メインキャラクターであろうとも、あっけなく命を落としていく。予測がつかないにも程があるが、これこそが「ゲーム・オブ・スローンズ」の醍醐味。第三章と対になる第四章になると長らく名前しかでてこなかったマーテル家も登場し、ついに諸名家が出揃う事になる。第三章で起こった出来事の多くが、この四章でひとつの結論へと至り、ストーリーとしてもひとつの転機を迎える事になる。