May 02, 2025 column

リリー・フランキーやMEGUMIも参加 イタリアの片田舎でアジア映画とワインと美食漬け 第27回ウディネ・ファーイースト映画祭が開催中

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リリー・フランキー「日本の映画に欠けているもの、ウディネで見つけた」

今回、長編映画初監督となったフィリピンのジャヌス・ヴィクトリアが手がけた『Diamonds in the Sand』主演のリリー・フランキーが自身の映画を「ウディネから世界に発信することが、いかに重要か」と言うことを語り、「現在の日本映画に欠けているもの」を明確に指摘したトークもあった。リリー・フランキーは、ウディネ入りした唯一の理由を「このフィリピンの新人監督の世界デビューを見届けるため、彼女の応援に来た」と断言しており、公式上映があった会場で1000人以上が収容された満席の会場で感無量の表情を浮かべていた。

また、会期中に行われたトークでは、フィリピンの映画界の発展スピードが速く、製作現場スタッフの平均年齢が日本に比べて低いことに、フィリピン映画界の将来性の高さを実感した、ということを自身の実体験として語った。また、彼は「日本では映画の撮影現場ではなぜか現場スタッフの表情が暗く、みな一様に疲弊している」と感じることが多い中、「フィリピンでは、様々な困難やトラブル、予期せぬハプニングがある中でも、多くのスタッフは現場での対応力が高く、皆の目がキラキラと輝いており、現場で働けることに対して楽しさを見出していた」ように見えたことを回顧。「現在の日本映画には、映画界で働く楽しさを感じる機会が少ない」と指摘した。昨今の映画業界では、他国との国際共同製作が増えている中、フランキーのように、自由に国境を越え、様々な国籍の映画に出演しながら、自らがそれぞれの国での映画製作の現場を経験し、“映画”という共通言語を持ち歩き、ウディネのような映画の社交場でさまざまな映画人と自ら交流し、その結果が日本映画に還元されている様子は、まさにウディネが“アジア映画の桃源郷”と呼ばれ続け、映画人に愛されていることの所以である。

文 / 高松美由紀

作品情報
第27回 ウディネ・ファーイースト映画祭2025

イタリアのウディネで開催された世界最大のアジア映画祭、ウディネ・ファーイースト映画祭。過去には、ジャッキー・チェン、ジョニー・トーらをはじめ、アジアのスターたちも気さくに参加して映画を語り合う、観客と作品ゲストの距離が近い映画祭としても有名。映画祭に併せて、映画人の企画開発のワークショップやジャーナリストの育成プログラムなども実施しており、ここから巣立った映画も多数世界で公開。

(プログラムの一部)
FOCUS ASIA
業界関係者向けのイベントで、アジアとヨーロッパの国際共同制作等を促進するため、プロデューサー、セールスエージェント、映画配給会社、テレビ放送局、VODプラットフォーム等が参加し、関係発展のためのネットワーキングを行う。

Ties That Bind
ヨーロッパとアジアによる国際共同製作を目指すワークショップ。アジアと共同製作経験のあるヨーロッパ映画業界関係者等がメンターとなり、脚本開発、資金調達、マーケティング、共同製作の契約などを学ぶトレーニングプログラムを提供。グループワークや個別セッション形式で実施。

開催:2025/04/24 ~ 2025/05/02

公式サイト https://www.fareastfilm.com/

高松 美由紀

スイス特派員
1973年生まれ、兵庫県出身。アメリカの大学卒業後、(株)トライアルで映画宣伝に従事。その後、東京国際映画祭はじめ国内外の映画祭にて運営や広報を経験しながら、映画の宣伝などを続ける。1999年から(株)TBSテレビにて、映画専門の海外セールスチームに所属、「下妻物語」「NANA」「日本沈没」など日本映画を海外に販売、映画祭への出品などを経験、退社後の2013年に(株)Free Stone Productions(映画&アニメなどの国内外PRおよび海外展開を提供する会社)を立ち上げ、現在も継続しつつ、合同会社Wonder M(ワンダーエム)でスイスを拠点にエンタテインメントの魅力を発信中。