リリー・フランキー「日本の映画に欠けているもの、ウディネで見つけた」
今回、長編映画初監督となったフィリピンのジャヌス・ヴィクトリアが手がけた『Diamonds in the Sand』主演のリリー・フランキーが自身の映画を「ウディネから世界に発信することが、いかに重要か」と言うことを語り、「現在の日本映画に欠けているもの」を明確に指摘したトークもあった。リリー・フランキーは、ウディネ入りした唯一の理由を「このフィリピンの新人監督の世界デビューを見届けるため、彼女の応援に来た」と断言しており、公式上映があった会場で1000人以上が収容された満席の会場で感無量の表情を浮かべていた。

また、会期中に行われたトークでは、フィリピンの映画界の発展スピードが速く、製作現場スタッフの平均年齢が日本に比べて低いことに、フィリピン映画界の将来性の高さを実感した、ということを自身の実体験として語った。また、彼は「日本では映画の撮影現場ではなぜか現場スタッフの表情が暗く、みな一様に疲弊している」と感じることが多い中、「フィリピンでは、様々な困難やトラブル、予期せぬハプニングがある中でも、多くのスタッフは現場での対応力が高く、皆の目がキラキラと輝いており、現場で働けることに対して楽しさを見出していた」ように見えたことを回顧。「現在の日本映画には、映画界で働く楽しさを感じる機会が少ない」と指摘した。昨今の映画業界では、他国との国際共同製作が増えている中、フランキーのように、自由に国境を越え、様々な国籍の映画に出演しながら、自らがそれぞれの国での映画製作の現場を経験し、“映画”という共通言語を持ち歩き、ウディネのような映画の社交場でさまざまな映画人と自ら交流し、その結果が日本映画に還元されている様子は、まさにウディネが“アジア映画の桃源郷”と呼ばれ続け、映画人に愛されていることの所以である。
文 / 高松美由紀
イタリアのウディネで開催された世界最大のアジア映画祭、ウディネ・ファーイースト映画祭。過去には、ジャッキー・チェン、ジョニー・トーらをはじめ、アジアのスターたちも気さくに参加して映画を語り合う、観客と作品ゲストの距離が近い映画祭としても有名。映画祭に併せて、映画人の企画開発のワークショップやジャーナリストの育成プログラムなども実施しており、ここから巣立った映画も多数世界で公開。
(プログラムの一部)
FOCUS ASIA
業界関係者向けのイベントで、アジアとヨーロッパの国際共同制作等を促進するため、プロデューサー、セールスエージェント、映画配給会社、テレビ放送局、VODプラットフォーム等が参加し、関係発展のためのネットワーキングを行う。
Ties That Bind
ヨーロッパとアジアによる国際共同製作を目指すワークショップ。アジアと共同製作経験のあるヨーロッパ映画業界関係者等がメンターとなり、脚本開発、資金調達、マーケティング、共同製作の契約などを学ぶトレーニングプログラムを提供。グループワークや個別セッション形式で実施。
開催:2025/04/24 ~ 2025/05/02