May 02, 2025 column

リリー・フランキーやMEGUMIも参加 イタリアの片田舎でアジア映画とワインと美食漬け 第27回ウディネ・ファーイースト映画祭が開催中

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イタリアで“水の都“と言われるヴェネチアから約100キロほど北東の山側に入った地域に、10万人ほどの人口しかない小さな街・ウディネがある。いつもは静かで穏やかなこの街では、毎年4月に世界最大のアジア映画祭であるウディネ・ファーイースト映画祭が開催され、世界中のアジア映画人や観客が一堂に集結する。本映画祭で上映される作品はジャンルを問わず、新作はもとより、旧作含めた特集上映など、意欲的な作品ラインアップは毎年世界の映画人達を驚かせている。今年で27年目を迎える本映画祭、映画を通してアジアの文化交流が世界に溢れ出る瞬間を体感できる様子を現地からお届けする。

アジア映画の桃源郷―ウディネ

今年で27年目を迎えるウディネ・ファーイースト映画祭、新旧合計75以上の作品が11の国や地域から出品されている。本映画祭は、まだまだ日本での知名度はそれほど高くはないが、過去には『カメラを止めるな!』(上田慎一郎監督)が世界で初めて本映画祭で話題になり世界デビューを果たしたり、ジャッキー・チェンがこの映画祭に参加するためにプライベートジェットを自ら 提供してウディネに降臨したり、と毎年何かと奇跡的な逸話を作っている。もう一つの特徴としては、一般投票による観客賞が設置されており、まさに“観客主導型”の映画祭となっている。

昨年は、映画『高野豆腐店の春』(三原光尋監督)が観客賞の第1位となる<ゴールデン・マルベリー賞>を受賞、同時にイタリア国内の映画ファン向けデジタル配信プラットフォームである“MYmovies”の視聴者によって選ばれる<パープル・マルベリー賞>にも輝き、見事なダブル受賞で着地。『瞼の転校生』(藤田直哉監督)は観客賞の2位に食い込み、白石和彌監督の時代劇『碁盤斬り』は批評家賞である<ブラック・ドラゴン賞>を受賞するなど、日本映画の快進撃が爆発した年となったが、今年も出品作品数では他地域と比べて群を抜いており、日本からの作品(新作)は合計13作品と、参加している地域からの出品としては最多数を記録している。

『アングリースクワッド 公務員と7人の詐欺師』(上田慎一郎監督)、『悪い夏』『嗤う蟲』(いずれも城定秀夫監督)、『はたらく細胞』(武内英樹監督)、『ドールハウス』(矢口史靖監督)、『Good Luck』(足立紳監督)、『雨の中の慾情』(片山慎三監督)、『リライト』(松井大悟監督)、『ほなまた明日』(道本咲希監督)、『今日の空が一番好き、とまだ言えない僕は』(大九明子監督)、『敵』(吉田大八監督)、『怖い家』(渡辺紘文監督)、『パリピ孔明 THE MOVIE』(渋江修平監督)、そしてフィリピンと日本とマレーシアの合作映画でもある『Diamonds in the Sand(原題)』(ジャヌス・ヴィクトリア監督)では、主演のリリー・フランキーがウディネ入りをし、日本の存在感を見せつけている。

これらの作品名を見ただけでも、これほどまでのバラエティ豊かな作品が一気に観られる映画祭というのも、かなり稀有であることが窺い知れる。また映画祭会期中には、毎年アジアの著名な映画人が選ばれる生涯功労賞も発表されるが、今年は台湾出身の女優兼映画監督でもあるシルヴィア・チャンが選ばれ、台湾の巨匠・侯孝賢(ホウ・シャオシェン)とシルヴィアが共同製作をした『娘の娘』(ホアン・シー監督)が上映された。

この映画祭に参加する日本からの映画人は、必ず「なぜ、こんな小さな街でアジアの映画が世界から集められるのか?」「なぜいろんな著名人たちがわざわざこの映画祭に参加するのか?」という大きなクエスチョンマークを抱え、半信半疑な気持ちでこの映画祭に参加している。そして、一度この映画祭を経験した人達はこの映画祭の魅力にはまり、日本帰国後にはウディネでの映画祭体験を仲間の映画人に語り継ぎ、数珠繋ぎのごとくゲストたちがやってきて、この“アジア映画の桃源郷”の魅力にハマってしまうようだ。今までの日本人ゲストの中には、映画音楽を手掛ける久石譲、大林宣彦監督はじめとした映画監督、安藤サクラ、松山ケンイチ、斎藤工、松田龍平、上戸彩、伊藤沙莉、亀梨和也、森田剛などの俳優たち、そして昨年は映画『PLAN 75』(早川千絵監督)を持って、生涯功労賞を受賞した倍賞千恵子らが名を連ねている。そして、一度映画祭に参加した日本の映画人たちは皆口を揃えて「また(ウディネに)行きたい」と公言する。では、なぜこんなにもゲストたちを惹きつけるのか。それには大きな理由がある。