お正月映画の目玉として公開され、予想どおり大ヒットのスタートを記録した『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』。すでに観た人も多いかもしれないが、まだまだ人気は加熱しそうなので、その見どころを解説していきたい。『ハリー・ポッター』からつながる“魔法ワールド”は、この作品の後もまだまだ続くので、これからの展開も楽しみにしてほしい。
『ファンタビ』が熱い支持を受ける理由
11月23日に日本でも公開が始まった『ファンタスティック・ビーストと黒い魔法使いの誕生』は、ロケットスタートを切り、お正月映画のトップへと順調に突き進んでいる。2年前に公開された前作『ファンタスティック・ビーストと魔法使いの旅』が73.4億円のメガヒットを記録したが、それ以上のハイペースで数字が積み重なっているので、今後の興行収入にも注目が集まる。
この新作がなぜ多くの支持を集めるのか? それは『ハリー・ポッター』時代から観続けてきたファンと、前作から観始めた人の両方を満足させる仕上がりになっているからだろう。ハリー・ポッターからニュート・スキャマンダーに主人公が移り、より大人のドラマも濃厚になったことで、『ファンタスティック・ビースト』から観始めた人も多い。そんな大人へのアピールとして今回の『黒い魔法使いの誕生』は万全とも言える。
誰もが魅了されるニュートの魅力、大人こそ楽しめるドラマとテーマ
魔法動物学者のニュート・スキャマンダーがNYで大騒動に巻き込まれた後、向かった先はイギリス。タイトルの“黒い魔法使い”であるグリンデルバルドが逃走したため、ニュートはその行方を探す使命も託され、パリへ行くことになる。映画の冒頭からグリンデルバルドが仲間とともに繰り広げる大スペクタクル脱走劇で、一気に観客のテンションはアップ。たちまち“世界”に引き込んでしまうマジカルな演出は、『ハリー・ポッター』シリーズの後半からずっと監督を任されてきた、デイビッド・イェーツならではだ。
前作でもそうだったが、主人公ニュートのキャラに親近感をわかせる演出は今回より鮮明になっている。おっちょこちょいでマイペース、基本的に“天然”系のニュートは明らかに母性本能をくすぐる。そして魔法動物を集めて飼育している点は、まさにオタクそのもの。つまり男女問わず好きになってしまうキャラクターなのである。今回、自分の意思とは裏腹にグリンデルバルド捜索に巻き込まれる運命なので、そんなニュートのキャラ設定がより効果的に働いているのだ。周りに翻弄される主人公は、ある程度、社会経験を積んだ大人の方が共感してしまうかもしれない。
そのニュートと前作で出会った魔法使いのティナ。彼女の妹のクイニーとノーマジ(人間)のジェイコブという、2組のカップルのちょっぴり微妙な恋愛関係に、今回は新登場となるニュートの兄のテセウスが、ニュートの昔の恋人リタと婚約中であるという、やや複雑な事情も加わり、3組のラブストーリーが展開。さらにニュートの恩師で、この後、ホグワーツ魔法魔術学校の校長となるダンブルドアと、グリンデルバルドの過去の濃密な“絆”を匂わせるなど、人間ドラマの部分が想像力をかき立てる。そして「魔法使いが人間を支配するべき」と強硬な意見で賛同者を増やすグリンデンバルドの姿は、現代のリアルな国際社会を反映していたり…と裏読みができ、密かに込められた骨太なテーマも観逃せない。