作家性×新次元への挑戦が奇跡的なまでに融合した新たなる傑作『ダンケルク』
キャストやスタッフに関しても、信頼をおけるメンバーに、新たな血を入れることで、映像作家としてのマンネリに陥らないようにしている。トム・ハーディ、キリアン・マーフィーに、マイケル・ケイン(『ダンケルク』では声のみの出演)といった“ノーラン組”や、ケネス・ブラナー、マーク・ライランスの大御所俳優に対し、若き兵士たちには新人のフィン・ホワイトヘッド、ワン・ダイレクションのハリー・スタイルズら映画初出演のキャストもあえて起用。ベテランの安心感と新人のピュアな魅力による化学反応を起こしている。
前述の撮影スタイルの変更によって、撮影監督には『インターステラー』以来2度目のタッグであり、比較的新たな人材であるホイテ・ヴァン・ホイテマを招きつつ、音楽はノーラン作品の常連であるハンス・ジマーが担当。ノーランの腕時計の秒針に発想を得たというチクタク音からのスコアは、『ダンケルク』のカウントダウンサバイバルを絶妙に表現しており……と、書ききれないほどに、ノーランの過去の作家性と、新次元へのチャレンジが、『ダンケルク』には詰まっている。そしてすべての表現やチャレンジが、作品にうまく機能しているところが奇跡的なのである。
今後、クリストファー・ノーランは監督としてどう変化していくのか。ジェームズ・ボンドの映画にも興味津々のようだが、ダニエル・クレイグがボンド役を引退すれば、その可能性も浮上しそうで、新たな『007』映画を観られる日が来るかもしれない。その前に、“秘密主義”として準備しているノーランの新作が観られるはずで、早くも楽しみでならない。
文/斉藤博昭
『ダンケルク』
第二次大戦中の1940年。フランスの海辺の町、ダンケルクで40万人の英仏連合国軍の兵士がドイツ軍に包囲される。若き兵士のトミーを中心に、彼らがどうやって撤退できたのかを、陸・海・空それぞれの視点で描く。民間人の船も加わった史上最大といわれる救出作戦を、クリストファー・ノーラン監督は65mmフィルムとIMAXカメラで撮影。スケール感満点の映像で、脱出する兵士たちの感覚を臨場体験させる。パイロット役のトム・ハーディ、オスカー俳優のマーク・ライランスら実力派とともに、若き兵士役に新鮮な顔ぶれが抜擢されたことも話題。
映画『ダンケルク』
監督・脚本・製作:クリストファー・ノーラン
出演:フィン・ホワイトヘッド、ハリー・スタイルズ、ケネス・ブラナー、キリアン・マーフィー、マーク・ライランス、トム・ハーディほか
配給:ワーナー・ブラザース映画
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2017年9月9日(土)公開
公式サイト:dunkirk.jp
『ダークナイト』
ブルーレイ :2381円(税抜)DVD:1429円(税抜)
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
(C)2014 Warner Bros. Entertainment Inc.
『インセプション』
ブルーレイ:2381円(税抜)DVD:1429円(税抜)
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
(C)2014 Warner Bros. Entertainment Inc.
『インターステラー』
ブルーレイ:2381円(税抜)DVD:1429円(税抜)
発売・販売元:ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
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