Jul 06, 2020 column

日常にふいに訪れる恐怖『呪怨:呪いの家』がこわ過ぎる

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だが今回は、新生『呪怨』という感じで、今一度、理屈と関係なく、日常にふいに訪れる恐怖に立ち戻っているかのようである。正直に言えば、一瞬、つい笑ってしまったところもあったのだが、様々な怪奇現象の恐怖のみならず、陰惨な人間関係の恐怖がランダムに描かれる。

学校での虐め、子供へのDV、誘拐、不倫、愛憎による殺人等々……。さらには、劇中、たびたび、テレビで流れるニュース映像は、実際にあった大事件である。チェルノブイリ、オウムによるサリン事件、阪神淡路大震災等々……。

JU-ON ORIGIN

88年から97年にかけて世界は事件にあふれていた。世界を揺るがす巨大な死、日常にたくさん転がっている暴力、理由なく人を巻き込んでいく怪奇現象……すべてが理屈をつけたくてもつけがたい不条理に満ち、その絶え間ない渦が30分× 6話、止まることなく進行し、一気に全6話見せる駆動力となる。エンディングの途中で勝手に次の回に切り替わってしまうNetflixの仕様のせいというのもあるのだが……。

ちなみに、エンディング曲は、アイヌの伝統歌『ウポポ』の再生と伝承をテーマに活動する女性ヴォーカルグループMAREWREW(マレウレウ)『sonkayno』で、その連なる輪唱とドラマで起こる様々な関連性のない事件の連続がみごとに重なって聞こえる。

『sonkayno』はアーティストの公式サイトによると、“親子ネズミが罠の中にある沢山のお菓子を引っかからないように取る遊びで、お正月とかみんなが集まった時によく行っていた遊び唄”だという。マザーグースをはじめとして昔から伝わるわらべ歌みたいなものってなぜかコワさを併せ持っている。

JU-ON ORIGIN

『呪怨:呪いの家』の英題は『JU-ON:Origins』であり、理屈がないようで、謎の呪いの家の因果が解き明かされそうなとば口も……。はじめに、昭和と平成の間だから成立するジャパニーズホラーと書いたが、その間に起こった猟奇的な事件や世界的な問題は2020年になってもなんら解決していないし、都会には空き家も増えている。ひっそり黙って建ち続けている空き家の増殖はジャパニーズホラーの不滅を物語るかのようである。そしてほのぐらく湿った梅雨の季節にぴったり。

監督は『きみの鳥はうたえる』などの新鋭・三宅唱。荒川良々、黒島結菜ほか、柄本時生、仙道敦子、倉科カナ、井之脇海、長村航希、岩井堂聖子、テイ龍進、松浦拓弥、土村芳、夙川アトム、大和田南那など豪華キャストが揃っている。

文・木俣冬

配信情報
JU-ON ORIGIN
Netflixオリジナルシリーズ「呪怨:呪いの家」(全6話)

1シーズンは、日本で2020年7月3日より配信開始

伝説のホラー映画『呪怨』シリーズが、Netflix Japanが贈る初のホラー作品に進化を遂げ、再び世界を震撼します。実際に起きた忌まわしい出来事に焦点を当てて描き出す『呪怨:呪いの家』。すべての呪いの始まりは、ある一軒の家に端を発していた…。”呪いの家”と関わる人々に降りかかる恐怖の連鎖が生々しく映し出されます。

監督: 三宅唱
出演: 荒川良々、黒島結菜、里々佳、長村航希、岩井堂聖子、井之脇海、テイ龍進、松浦祐也、土村芳、柄本時生、仙道敦子、倉科カナ
脚本: 高橋洋、一瀬隆重
製作総指揮: 山口 敏功 (NBCユニバーサル・エンターテイメントジャパン)
坂本和隆 (Netflix)
プロデューサー: 一瀬隆重、平田樹彦

Netflixオリジナルシリーズ『呪怨:呪いの家』
Netflixにて全世界独占配信中

Netflixオリジナルシリーズ『呪怨:呪いの家』 公式サイト
https://www.netflix.com/ju-on_origins

木俣冬

文筆家。著書『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説 なつぞら」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など。 エキレビ!で「連続朝ドラレビュー」、ヤフーニュース個人連載など掲載。 otocotoでの執筆記事の一覧はこちら:[ https://otocoto.jp/ichiran/fuyu-kimata/ ]