May 21, 2020 column

いま見られる注目のドラマ ~ こんなときだからこそ見ることをおすすめしたい作品

A A
SHARE

「捨ててよ、安達さん。」は安達祐実が本人役で登場。女性雑誌の企画で断捨離をはじめた安達が毎回、捨てようと思ったものが擬人化した妖精(?)と語り合うというシュールなドラマ。安達が映っているDVDや高校時代のケータイなど、あくまでフィクションとはいえ“安達祐実”のものだと思うと生々しさもあって気にかかる。そういうのもあれば、輪ゴムとレジ袋や手作りの時計とか、え?と思うようなものも。

断捨離もいまこの時期、家にこもっているためやっている人たちも多いと思うし、捨てるに当たってそのものに関していろいろ考えてしまうことも誰しも経験があることで、自分に返して見てとても共感できるドラマになっている。そういう見方もできるし、天才子役として36年間、活躍してきた安達祐実の内面がちょっと垣間見られるような部分も楽しめる。

メインの監督、脚本は映画「恋するマドリ」や「勝手にふるえてろ」の大九明子で、女性の飾らない、ふだんのなにげない身振り手振りを撮る視点に長けていて、夫のセーターの毛玉を無心にとっている安達祐実(第一回より)などは本当にすばらしい画である。なにより安達祐実自身が妖精のように不思議な存在感でいつまで見ていても飽きない。大自然と動物や猫の生態を映した映像を見ているような気持ちで見続けてしまう。

© 「捨ててよ、安達さん。」製作委員会

『捨ててよ、安達さん。』公式サイト: https://www.tv-tokyo.co.jp/suteteyo_adachisan/

「レンタルなんもしない人」は実際に“レンタルなんもしない人”としてケータイで依頼を受けている人物の書いた書籍を原作にしたドラマ。ドラマといえば、派手になにか問題を解決したり、派手に一角の人物になったり、派手に仕事や恋愛など目標を遂げたりするものという先入観があるが、このドラマの主人公は、何もしないで、ただ、依頼者の話を聞いたり、やりたいことにつきあったり、その人に寄り添うだけですごく喜ばれるという目からウロコの行為によって社会での居場所を見つける。

それを、なんにもしないと真逆な、歌や踊りや演技やなんでもして忙しく大活躍する人の代表格のようなジャニーズの一員である増田貴久が絶妙なほわんとした感じで演じている。これまた偶然にも、いま「新しい生活習慣」によって以前のような行動ができなくて戸惑っている人も多いなか、ガツガツなにかしなくてもいいような気にさせてくれて大変ありがたいドラマである。

『 レンタルなんもしない人 』公式サイト: https://www.tv-tokyo.co.jp/rentalsan/

いま、放送されているドラマ、不思議と気楽に見ることのできる、ふんわりした作品がそろっている。放送が中断されているドラマも撮影が再開されることを祈りつつ、いま見られるドラマを楽しみたい。

文・木俣冬

木俣冬

文筆家。著書『みんなの朝ドラ』(講談社新書)、『ケイゾク、SPEC、カイドク』(ヴィレッジブックス)、『挑戦者たち トップアクターズ・ルポルタージュ』(キネマ旬報社)、ノベライズ「連続テレビ小説 なつぞら」(脚本:大森寿美男 NHK出版)、「小説嵐電」(脚本:鈴木卓爾、浅利宏 宮帯出版社)、「コンフィデンスマンJP」(脚本:古沢良太 扶桑社文庫)など。 エキレビ!で「連続朝ドラレビュー」、ヤフーニュース個人連載など掲載。 otocotoでの執筆記事の一覧はこちら:[ https://otocoto.jp/ichiran/fuyu-kimata/ ]