Jun 02, 2017 column

小栗旬、山本耕史を始めとした豪華キャストにステージが動く新劇場との組み合わせは、最高のエンタテインメント!

A A
SHARE

豊洲に出来た新劇場 IHI STAGE AROUND TOKYOでの挑戦

パソコンで「しんかんせん」と打つと「新感線」が「新幹線」よりも先に出るようになった。以前は、当然のように「新幹線」だったのに。世の中に「劇団☆新感線」がずいぶんと浸透した証拠だろう。
だからチケットもなかなか手に入らない、そんな人気劇団、新感線の出世作である『髑髏城の七人』が、豊洲に出来た画期的な新劇場 IHI STAGE AROUND TOKYOで1年3ヶ月の長期に渡り、4つのバージョンで上演するという、これまた画期的な企画が行われている。こんな偉業ができるのも、それだけ大きな劇団であるということだ。

 

(C)2017『髑髏城の七人』花、【撮影:田中亜紀】

(C)2017『髑髏城の七人』花、【撮影:田中亜紀】

『髑髏城の七人』は、本能寺の変によって織田信長が倒れてから8年後、誰が天下をとるか、野心燃え盛る戦国を舞台したスリルに満ちた物語だ。時は天正18年。豊臣秀吉による天下統一が目前に迫っていたが、まだ手薄になっている関東では、天魔王(成河)率いる関東髑髏党が勢力を強めていた。

この髑髏党に襲われていた少女・沙霧(清野菜名)を、通りかかった捨之介(小栗旬)が助け、関東一の色里と言われる無界の里に連れていく。そこの主人・無界屋蘭兵衛(山本耕史)は、捨之介と旧知の仲だった。

(C)2017『髑髏城の七人』花、【撮影:田中亜紀】

(C)2017『髑髏城の七人』花、【撮影:田中亜紀】

さらに、無界一のいい女・極楽太夫(りょう)や、彼女を慕う兵庫(青木崇高)、曲者そうなお侍・狸穴二郎衛門(近藤芳正)なども加わり、野心のために人々を殺めていく無慈悲な髑髏党に立ち向かうことになる。

主要な登場人物たちは皆、奇妙で縁で結ばれている。髑髏党が追う沙霧の重要な秘密や、捨之介と蘭兵衛と天魔王の因縁など、最後まで驚くことばかり。名匠・黒澤明監督の『影武者』や『七人の侍』などの時代劇へのリスペクトも感じさせられるところもある通なストーリーに、アクション、笑い、音楽、映像などがふんだんに盛り込まれたエンターテインメント作が、今回、新しい劇場によって、いっそうスケールの大きな作品になったこと。それを映画で例えると、ビスタサイズからシネマスコープサイズに広がったという感じ。とにかく、迫力が圧倒的だ。

 

新しい劇場を使い尽くした迫力

IHI STAGE AROUND TOKYOは、観客が体感できる“没入型エンターテインメント施設”という触れ込みで誕生した、アジアでは初めてになるというスタイル。ステージが観客席をぐるり、360度取り囲む作りになっている。全方向で行われるパフォーマンスをどうやって観るかというと、客席が動いて、ステージを追いかけるようになっているのだ。席がじわじわ動いている振動などを感じながら、芝居を観るのは、アミューズメントパークのアトラクションや、4DXやMX4Dの映画のよう(ただ、映画のような風やニオイなどのエフェクトはない)。

通常だと、ステージは一面しかないから、場面が変わるときに、装置を入れ替えないといけない。その過程を観るのも演劇の醍醐味ではあるが、入れ替えずに済むと、しっかりした装置をつくることができるし、場面転換の時間が短縮されて、スピードもアップ。
今回の『髑髏城』も、森の中や、色里・無界の里、髑髏城など、場面場面、しっかり作り込んだ美術を楽しめた。
とりわけ、クライマックスは圧巻だ。その分、美術スタッフの事前の作業も大変だろうし、俳優もたくさん動き回らなくてはならなくて大変だろうと思う。