これまで約10年にわたり、数々の大記録と共に映画史を塗り替え続けてきた「マーベル・シネマティック・ユニバース」(通称:MCU)。4月26日公開の『アベンジャーズ/エンドゲーム』で一区切りを迎える本シリーズの最後のピースであり、これからのMCUの中心人物となるであろう最重要キャラクター『キャプテン・マーベル』がついに姿を現す。今回は、MCU初の女性ヒーロー単独主演映画となる本作に迫る。
※一部、映画のネタバレに繋がる内容が含まれています。
MCU史上最強のヒーローがついに登場!
『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』(18年)のクライマックス、最強最悪のラスボス、サノスによって全宇宙が壊滅的な打撃を受ける中、元S.H.I.E.L.D.長官のニック・フューリーが、ポケベル型通信機で救援信号を送ったことで、その存在が明らかになったキャプテン・マーベル。装置のパネル部分に映し出された赤と青のカラーリングと中央に星形のシンボルマークを見た世界中のコミックファンたちは瞬時に彼女のMCU合流を理解し、ネット上では瞬く間に歓喜の声で溢れかえったのは記憶に新しい。
満を持して公開となった本作では、『ルーム』(15年)でアカデミー賞主演女優賞を獲得したブリー・ラーソンを主演に迎え、MCU史上最強と言われるヒーローの誕生とアベンジャーズ結成にまつわるオリジンストーリーが展開する。
6年前に瀕死の重傷を負い記憶を失ったある一人の女性が、その代償に得た圧倒的なパワー“フォトンブラスト”を持って、宇宙に君臨するクリー帝国のエリート・ソルジャー・チーム“スターフォース”の隊員として活躍していた。ある時、クリーと対立関係にあるスクラル人との戦闘中に彼女の“失われた記憶”が狙われ捕えられてしまう。何とか脱出することに成功するが、その過程で地球に墜落し、そこで若き日のフューリーと出会う。フラッシュバックする記憶を辿りながら、二人はスクラル人の地球侵攻を阻止する旅に出る。
本作の見どころは、ド派手なアクションシーンもさることながら、メインテーマとして描かれる“自分探しの旅”だろう。ストーリー作りには毎度定評のあるMCUだが、本作はいつも以上に丁寧に作られている。自分は何者なのか、どうやって強大なパワーを手に入れたのか。彼女が記憶を取り戻すまでのサスペンスフルな過程は、映画『ボーン』シリーズのジェイソン・ボーンを彷彿とさせる。彼女が全ての記憶を取り戻し、孤独から解放された姿がスクリーンに映し出されたとき、思わずスタンディングオベーションしたくなってしまうことは必至だろう。
原作コミックの初登場時は男だった?
コミックにおけるキャプテン・マーベルの歴史は意外に長い。1967年に登場した初代キャプテン・マーベルは“マー=ベル”という名前のクリー人であり、性別も男だった。マー=ベルはクリー帝国が送り込んだスパイで、米軍の科学者として地球に潜入していたが、地球人と触れ合っていく中で正義の心が芽生え、地球を守るヒーロー“キャプテン・マーベル”としてとして活躍するようになる。
その後は、彼の子どもなど魂を受け継ぐ存在が「キャプテン・マーベル」を名乗っていくが、映画版の主人公にあたるキャロル・ダンバースは、実は6人目のキャプテン・マーベルになる。米軍のパイロットを務める地球人だったが、ある事故でマー=ベルのDNAと融合してしまい、ミズ・マーベルの名前で1969年からヒーローとして活躍していた。その後、2度の改名を経て、2012年に晴れてキャプテン・マーベルの名前を襲名した。
ちなみに、ミズ・マーベル=キャロル・ダンバースは、60年代後半から広まった女性解放運動を背景に誕生したキャラクターで、偏見や差別に屈しない強い女性像の設定は映画版にも色濃く残っている。DCコミックの『ワンダーウーマン』(17年)が世界的に大ヒットした流れもあり、時代に即したキャラクター像は多くの人の共感を得られるだろう。