マーベルとDC、映画業界を盛り上げるクロスオーバーの世界
『アベンジャーズ』以降、MCU作品はフェイズ2に入り、安定的に大ヒット作を送り出す。2013年には『アイアンマン3』が世界興収で年間2位。その上の1位が『アナと雪の女王』なので、ディズニーの1&2フィニッシュに貢献する。その後も2016年には、MCUのフェイズ3のスタート作『シビル・ウォー/キャプテン・アメリカ』が世界興収年間1位で、以下、『ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー』、『ファインディング・ドリー』、『ズートピア』、『ジャングル・ブック』と、ベスト5をディズニーが独占。MCUが牽引役となった。2018年に至ってはMCUの『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』と『ブラックパンサー』が世界興収の2トップを飾った。『ブラックパンサー』はアカデミー賞作品賞ノミネートのほか3部門受賞という、マーベル作品初の快挙をもたらし、クオリティおよび革新性での信頼感も得たのである。
こうしてディズニーにバックアップされたMCUの世界観および人気の広がりは、この10年間、世界の映画興行の中核となった。『スター・ウォーズ』や『ファンタスティック・ビースト』など他にもメガヒット確実のシリーズもあるが、1年に2~3作を公開し続ける“量”でも勝負できるのがMCUの強みである。
各ヒーロー(またはチーム)の単独主演映画にしても、『アベンジャーズ』以降は、他のヒーローが顔を出すことが“常識”となり、その結果、ストーリーにも厚みが加わるという相乗効果が生まれた。ファンにとっては、次の作品に「誰が出るのか」という興味が膨らみ、MCU作品を「観続ける」という習慣がつく。このMCUの成功を追いかけるのがDCで、2013年の『マン・オブ・スティール』からDCエクステンデッド・ユニバースが立ち上がった。こちらはスーパーマン、バットマンなど、知名度でマーベルにも引けを取らないうえに、MCUとは一線を画すダーク&シリアス路線で差別化を図った。MCUの『アベンジャーズ』に相当するヒーロー結集の『ジャスティス・リーグ』のように賛否に分かれる作品もあるが、興行的に失敗しているわけではなく、MCUとともに映画業界を盛り上げているのが実情。MCUの『キャプテン・マーベル』よりも先んじて女性ヒーローを主人公にした『ワンダーウーマン』など、圧倒的に高い評価を受ける作品も出現した。映画ファンはMCUとDC、2種類を楽しむことが“習慣”となり、ヒーローのクロスオーバー世界は、現在の映画業界で最も収益を得るジャンルを確立している。マーベルの意図は見事に当たったのである。
マーベルとDCのヒーロー映画は、2018年世界興行収入のトップ10に5本をランクインさせている(1位『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』、2位『ブラックパンサー』、5位『アクアマン』、7位『ヴェノム』、9位『デッドプール2』)。以下、世界トップ10におけるマーベルとDCの本数は、2017年:4本、2016年:4本、2015年:1本、2014年:4本、2013年:3本、2012年:3本、そして2011年:ゼロ、2010年:1本……と、明らかに『アベンジャーズ』以降、急激に人気を独占。MCUが映画興行に与えたインパクトが、いかに大きいかがよくわかる。