Apr 23, 2019 column

MCU幕開けから「ディズニー+」まで、ビジネス視点でみるMCUの軌跡&成功、今後の展望

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4月26日(金)に公開される『アベンジャーズ/エンドゲーム』で、マーベル・シネマティック・ユニバースはひとつの集大成を迎える。ここ10年ほど、マーベルの作品は世界の映画界で“中心”となるブームを作ってきた。ディズニーとの提携もマーベルの人気を後押ししたわけだが、このユニバースの勢いはどこまで増していくのか? マーベルヒーロー映画の隆盛の軌跡や、ユニバースとしての魅力とともに、今後、劇場公開だけにとどまらない展開も含め、そのビジネスとしての成功を探ってみた。

“WinWin”の買収劇、ディズニー配給『アベンジャーズ』の大成功

今からちょうど10年前の2009年。映画業界の地図を大きく変える取引があった。ディズニーによるマーベル・エンタテインメントの買収である。その後、ディズニーは2012年にルーカス・フィルムを、そしてつい先日の2019年3月には21世紀フォックス(20世紀フォックス映画を含む)の買収を正式に完了。ハリウッドはもちろん、世界の映画界におけるウォルト・ディズニー・カンパニーの勢力はさらに拡大することになる。

このディズニーによる買収の直前にスタートしたのが、マーベル・シネマティック・ユニバース(MCU)である。最初の作品は2008年公開の『アイアンマン』。配給は北米がパラマウントで、日本はソニー・ピクチャーズだった。この『アイアンマン』は、2008年の北米ボックスオフィスで2位(3.18億ドル)という大ヒットを記録(1位はDCの『ダークナイト』)。全世界では8位(5.85億ドル)ではあったが、MCUのその後の躍進を予感させるという意味では十分な数字を残した。その後、2011年にかけて『インクレディブル・ハルク』、『マイティ・ソー』、『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』と、各ヒーローキャラクターの起源となる作品が登場。MCUの地固めがなされる。『アイアンマン2』を含めたここまでの作品は、ディズニー以外によって配給されたが、MCUのフェイズ1の締めくくりであり、彼らヒーローたちが総結集する『アベンジャーズ』の第1作から、満を持してディズニーが世界配給を手がけることになったのだ。

2008年『インクレディブル・ハルク』
北米17位(1.34億ドル) 世界21位(2.63億ドル)
2010年『アイアンマン2』
北米3位(3.12億ドル) 世界7位(6.23億ドル)
2011年『マイティ・ソー』
北米10位(1.81億ドル) 世界15位(4.49億ドル)
2011年『キャプテン・アメリカ/ザ・ファースト・アベンジャー』
北米12位(1.76億ドル) 世界17位(3.7億ドル)

と、ここまでの数字を挙げると、MCU作品が爆発的ブームを起こしたと言うのは性急だろう。興行収入においても過渡期であったことがわかる。しかし2012年、ディズニー配給となった『アベンジャーズ』が北米で6.23億ドル。世界でも15.18億ドルでそれぞれ年間1位と、特大ヒットを記録。この『アベンジャーズ』によって、MCU、つまりヒーローたちがクロスオーバーする世界観の面白さが一般に広く認知されることになった。言い換えればマーベルは、『アベンジャーズ』に向けて各ヒーローの作品をじっくり製作したのであって、そのひとつの集大成をディズニーが勢いをつけるという戦略が見事に当たったのである。

マーベルは、こうしてディズニーの傘下に入ることで、マルチメディアの展開や、人気キャラクターのブランド化など、これまでディズニーが得意としてきた戦略に乗っかることで、MCUのさらなる人気拡大を狙う。『アベンジャーズ』の大成功が、その選択の正しさを証明した。一方のディズニーは、創始者ウォルト・ディズニーの伝統を受け継いで、キッズやファミリー、女性向けのキャラクターやコンテンツには強力な自信を持ってきたが、男性向けのコンテンツは他の分野に比べて弱かった。そこを補う最適なスタジオがマーベルであり、さらに『スター・ウォーズ』を取り込むことで、壮大なキャラクター帝国を作る道筋が出来上がったのである。まさに両者にとって“WinWin”の買収劇だった。