同世代の中で頭1つ抜けた演技力を誇り、いまや確実に若手俳優のトップを独走する菅田将暉。今年、ドラマ『3年A組 ―今から皆さんは、人質です―』も話題になった彼の最新映画主演作は、山崎貴監督の超大作『アルキメデスの大戦』だ。第二次世界大戦前夜、巨大戦艦建造を巡る無謀な計画を、はからずも阻止することになる天才数学者に扮している彼の役者としての魅力、そしてマルチな分野で活躍する才能に迫る。
“天才的”な演技と絶賛された最新作
『アルキメデスの大戦』で菅田将暉が演じるのは、100年に1人の天才と言われる、元帝国大学の数学者・櫂直。数学を偏愛し、何でもかんでも――特に美しいものを見ると巻尺で計らずにはいられなくなる、ちょっとした変人だ。1933年、対立が深まる欧米列強に向けて世界最大規模の巨大戦艦を建造するかしないか、2つに割れる軍内部で、反対派の山本五十六(舘ひろし)から、櫂は巨大戦艦の詳細な見積もりを独自で算出してほしいという依頼を受ける。推進派が出した低すぎる見積もりの“虚偽”を暴ければ、建造計画は頓挫するというのだ。大の軍隊嫌いの櫂は即座に拒否するけれど、「巨大戦艦建造がこのまま進めば日本は必ず欧米と戦争になる」という山本の言葉に、日本とは比べものにならない軍力を持つ欧米の強さをわかっている櫂は、帝国海軍の中枢に1人で乗り込み、何の資料もないまま孤軍奮闘することになる。
ここでの菅田は誰が考えても不可能と思われることを可能にする類まれな才能に説得力を持たせる。相手を圧倒する、若干早口のセリフ回しや低音の落ち着いた声。物事の真実を射抜く鋭い瞳。見積もり計算にのめり込んでいく時の正義感と使命感に燃えた全身の躍動。それでいて巻尺で何かを計っているときの子どものような嬉々とした表情には変人ぶりにチャーミングさを加味。とにかく前進していく櫂のパワーがすごいのだが、パワーと言っても雄々しいものではなく、あくまでも頭脳をフル回転させるクールで知的なもの。菅田はこうした天才役がとても似合っている。
本作で共演した舘ひろしから「このスタイルで演技も天才的で、初めて男に嫉妬したわ!」と大絶賛された菅田将暉。天才的というのは『溺れるナイフ』(16年)の山戸結希、『火花』(17年)の板尾創路ら、これまで組んできた監督も言っていること。おそらく本能的にキャラクターの本質を掴み、感覚的に作り上げていく天賦の才があるのだろう。『あゝ、荒野』(17年)の岸善幸監督も、「こちらがイメージするキャラクター像を軽く超えて+αしてくるから、(役作りは)彼の解釈に任せたいと思える」と語っている。