Sep 21, 2019 column

ブラピの俳優キャリアと重なる?プランBが傑作を生み続ける理由に迫る

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プランB&ほかの野心的な製作会社

プランBが設立されたのは、2002年。当時、ブラピの妻だったジェニファー・アニストンも設立メンバーだった。ティム・バートン監督の大ヒット作『チャーリーとチョコレート工場』(05年)や、マーティン・スコセッシ監督のアカデミー賞作品賞受賞作『ディパーテッド』(06年)の製作に加わるなど、初期から注目作を送り出してきた。メジャースタジオのヒーローアクションとは明らかに一線を画す、マニアックなテイストも備えて成功させた『キック・アス』(10・13年)シリーズ2作のように、プランB製作の映画は、つねにどこか先鋭的。韓国のポン・ジュノ監督作『Okja/オクジャ』(17年)や、ブラピ自身が主演した『ウォー・マシーン:戦争は話術だ!』(17年)といったNetflixの配信作も手がけるなど、映画業界の流れをイチ早く受け入れる、フットワークの軽さも持ち味となった。

このように“プランBの作品ならおもしろい”というフレーズが、ほかの野心的な製作会社にも当てはまるのは、現在のハリウッドの潮流。その代表格といえば、FOXサーチライトだろう。製作費は高くないが、監督の方向性にほとんど口を出さないポリシーによって、賞レースをにぎわせる作品を送り出し続けている。同じ年(2017年度)に『シェイプ・オブ・ウォーター』と『スリー・ビルボード』という同社の2作がアカデミー賞作品賞を争ったのは記憶に新しいし、それまでも『スラムドッグ$ミリオネア』(08年)、『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』(14年)で同作品賞を受賞した実績を誇る。『グランド・ブダペスト・ホテル』(14年)や『犬ヶ島』(18年)のウェス・アンダーソンのように、映画作家と信頼の絆を育んでいるのもサーチライトの特徴。

『犬ヶ島』(Blu-ray・DVD 発売中) ©2019 Twentieth Century Fox Home Entertainment LLC. All Rights Reserved.

そのほか、設立は2012年ながら、『ルーム』(15年)や『ムーンライト』(16年)、『レディ・バード』(17年)といった賞レース作品だけでなく、『へレディタリー/継承』(18年)など野心的ホラー作品も送り出し、一気に気鋭のスタジオとして頭角を現したA24。YouTube出身の新たな才能に撮らせた『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』(18年)が、青春ムービーとして高い評価を受けるなど、やはり作家優先の姿勢がプランBと共通している。

『エイス・グレード 世界でいちばんクールな私へ』(公開中) © 2018 A24 DISTRIBUTION, LLC

また、ホラーといえば、超低予算の『パラノーマル・アクティビティ』(07年)を大成功させ、『ゲット・アウト』(17年)をアカデミー賞作品賞候補まで届かせた、ジェイソン・ブラムのブラムハウス・プロダクションズなども、製作会社の名前で“確実におもしろい”と予感させる地位を築いた。ハリウッドのメジャースタジオが、シリーズや“ユニバース”のように確実に当たる作品に力を入れる傾向が強まる中、これらの製作会社は、メジャーが敬遠しそうな作風やテーマに目を向け、配給を持ちかけるなどメジャーと良好な関係を築きながら、傑作を誕生させ続けている。