Sep 21, 2019 column

ブラピの俳優キャリアと重なる?プランBが傑作を生み続ける理由に迫る

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『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』に続き、ブラッド・ピットの映画『アド・アストラ』が公開された。宇宙の彼方で父親を探す飛行士の物語だが、これまでの宇宙を舞台にした映画とはまったく違う作風で、ブラピの演技も注目を集めている。製作もブラピの会社である、プランBエンターテインメント。ブラピのプロデューサーとしての手腕も発揮されたわけで、この“プランB”の躍進はまた加速していきそうだ。なぜプランBの作品はおもしろいのか? 同じく傑作・話題作を送り出す製作会社とともに、その秘密に迫っていこう。

宇宙を舞台にしながら“新鮮さ”がある新作

8月末のヴェネツィア国際映画祭でお披露目され、大きな話題を呼んだブラッド・ピット主演の『アド・アストラ』。宇宙を舞台にした壮大なアクションアドベンチャーであり、ブラピが演じるロイ・マクブライドは全編、ほぼ出ずっぱりで、人類がかつて経験したことのない旅に挑む。ロイは宇宙飛行士で、太陽系の彼方、海王星で行方不明になった父を探す物語だ。月や火星、海王星が驚くべきビジュアルで描かれ、観る者の予想を超える展開、ショッキングな描写も用意される一大スペクタクルではあるが、『ゼロ・グラビティ』(13年)や『インターステラー』(14年)のように、これまで観たことのない世界へ導く作品でもある。

人類の宇宙開発が意外なほどリアルに描かれつつ、主人公ロイのパーソナルな物語で、彼の抱える複雑な思いや人間ドラマも絶妙に盛り込んだところに、“新鮮さ”が感じられる『アド・アストラ』。それゆえにブラピの演技が作品の肝となっている。これまでのキャリアの集大成という評価もあり、これから始まる今年の賞レースでは、主演男優賞候補に絡んでくる可能性もありそう。

オスカーに絡む傑作を作るプランBのポリシー

この『アド・アストラ』、ブラッド・ピット主演のスター映画という側面も大きいが、ブラピが“出た”作品というより、“作った”作品と呼んだ方がいいかもしれない。自身の製作会社、プランBエンターテインメントの作品だからだ。いまやプランBといえば、映画ファンにとっては“傑作保証”のブランドである。ここ数年、プランBが製作に関わった作品が、ものすごい確率でアカデミー賞にノミネートされているからだ。

2013年の『それでも夜は明ける』、2014年の『グローリー/明日への行進』、2015年の『マネー・ショート 華麗なる大逆転』、2016年の『ムーンライト』、一年おいて2018年の『バイス』と、プランBの映画は過去6年間で、5作がアカデミー賞作品賞にノミネート。そのうち『それでも夜は明ける』と『ムーンライト』は作品賞の栄冠に輝いている。プランBが関わった作品が、ハリウッドで高い評価を受けるのは常識となった。『それでも夜は明ける』の作品賞受賞の際、ステージにブラピが上がった光景を見て、感動したファンも多かった。プロデューサーとして最高の作品を完成させた彼の喜びは、これまで見たことのない表情だったからだ。自分が演じるのではなく、作品を送り出すことに使命を感じているようでもある。

『それでも夜は明ける』(Blu-ray・DVD 発売中) © 2013 Bass Films, LLC and Monarchy Enterprises S.a.r.l. All Rights Reserved.

このオスカー候補作からもわかるように、ここ数年のプランBの作品は、人種問題や社会性・政治性を前面に押し出したものが多い。とはいえ、映画の作りは堅苦しいスタイルではなく、誰もが入り込みやすいエンタメ性だったり、スタイリッシュな作風だったりしている。メジャースタジオでは手を出しづらくなってきた挑戦的テーマをあえてチョイスし、賞レースに導くことで話題作として盛り上げる。一見、したたかなようだが、リスクも覚悟で、監督に本気で作りたいものを撮らせるというポリシーが、ここへ来て成功の連鎖を作っているのだ。プロデューサーとしてのブラピの信念、カッコよすぎである。