世界が騒然とした問題作、映画『LAMB/ラム』
9月23日に公開された映画『LAMB/ラム』。話題作を次々と世に送り出す気鋭の製作・配給会社A24が北米配給権を獲得し、カンヌ国際映画祭で上映されるやいなや観客を騒然とさせた衝撃の話題作だ。
本作は、第74回カンヌ国際映画祭のある視点部門で《Prize of Originality》を受賞、アカデミー賞国際長編部門アイスランド代表作品にも選出されるなど、批評家からも高い評価を受けている。
内容は、非常にシンプル。アイスランドの片田舎、クリスマスの朝に羊飼いの夫婦が羊の出産に立ち会うと、羊ではない“何か”が生まれる。ただ、それだけだ。そして、セリフは少なく、余計な説明もない。だからこそ、観ているものの想像の余地がある。
主人公たちは、生まれたタブーを神様からの贈り物だと受け入れることで、灰色のような日常が、表情豊かに彩られていく。必要最低限の会話しかなかった夫婦が、目に見えて幸せになっていくのだ。そしてその幸せを奪うものを許さない。
異常な出来事が普通の日常として描かれているので、一体異常なのは、スクリーンの中の物語か、我々観客なのかどちらか、判断がつかなくなる。何が正しくて、何がおかしいのか、自分自身の感覚に自信がなくなっていくのが分かるので、怖い。淡々と描かれる不気味な日常は、私たちの日常生活に支障をきたしそうなホラー映画だ。
本作の製作・配給会社であるA24は、『ミッドサマー』(2019)、『ヘレデタリー/継承』(2018)など、人気ホラー作品を生み出したスタジオでもある。今夏に公開され、三部作となることが決定している『X エックス』は、70年80年代ホラー作品のオマージュがふんだんに散りばめられ、多くのホラーファンを喜ばせた。
このようにホラーのイメージが強い会社だと思う方もいるかもしれないが、そうではない。A24が産み出す作品の面白さは、幅広いジャンルで観客を掴む作品を制作・配給するところにある。