Sep 16, 2022 column

第17回:女王エリザベス2世の崩御で観直したい映画、そして配信ドラマ

A A
SHARE

L.A.在住の映画ライター宮国訪香子が最新の現地情報をお届けする「ハリウッド・メディア通信」。今回は、女王エリザベス2世の崩御で観直したい映画と配信ドラマをテーマにお送りします。

今月9月8日英国の女王、エリザベス二世が96歳で崩御した。新聞、タブロイド紙はもちろん、ハリウッド業界紙、米オンライン映画ニュースでも、これまで制作されたエリザベス2世の映画や配信シリーズを紹介し、70年間、女王の座に君臨したエリザベス2世の姿をさまざまな女優が演じたことに触れ、故人を忍んでいた。

女王の人生を描いたドラマは、大英帝国が残した正と負の遺産も含め、様々な歴史を学ぶことが出来ると同時に、時代の節目を考えさせられる。王女として大英帝国の歴史を学んだ幼年期、ヨーロッパの終戦を見届けながら家族をもうけた若年期。国王チャールズ六世の死、若くして女王となり、王室と政治、家庭を両立すべく奮闘した中年期。さらには息子チャールズ3世とダイアナ妃の華々しい結婚と波乱に満ちた離婚に揺れ、ダイアナ妃の事故死によって、英国民から反感をかった時代など、イギリス王室の伝統を守り続けた女王の心の内は、クリエイターの想像を掻き立てて止まない。

去る2月の在位70周年記念式典、プラチナ・ジュビリーでは、英国のマスコット的存在、「くまのパディントン」といっしょにお茶をするエリザベス2世の動画が流れ、君主制国家の厳格な君主というよりは、やさしい祖母の姿で21世紀の民衆を虜にし、絶妙な広報戦略をこなして去っていったことなど、エリザベス2世の人生は今後も語り継がれるに違いない。

ヨーロッパの街角に並ぶ女王崩御のタブロイド誌 写真 / Patsy Hughes

プライム・ビデオ配信の『クィーン』

映画『マイ・ビューティフル・ランドレット』で脚光を浴びた英国人スティーヴン・フリアーズ監督の『クィーン』は、ダイアナ元皇太子妃の事故死を巡り、沈黙を貫いていたエリザベス女王に焦点を当てた映画。

© 2007 Pathe Pictures. All Rights Reserved.

王室、対国民、そして、一人間として描かれたこの作品では、主演女優ヘレン・ミレンがアカデミー主演女優賞を受賞した。夫、フィリップ殿下を俳優ジェームズ・クロムウェルが好演。女王の相談役として、反感を募らせていた国民の信頼を取り戻すために協力した首相トニー・ブレアの役を名優マイケル・シーンが演じ、脚本、監督、作品賞にもノミネートされたほどの感動作品。

オスカーを受賞した際、女優ヘレン・ミレンはエリサベス2世への賛辞をのべ、その後、女王のお気に入りの映画だったのか、監督、脚本家のピーター・モーガンとともに王室のお茶会に招待されたというエピソードもある。

ネットフリックス、長寿シリーズ「ザ・クラウン」

「ザ・クラウン」を視聴するために、ネットフリックスに加入したという人が大勢いるほど、いまだに、全米大人気のこのシリーズは去年のエミー賞でドラマ7部門にノミネートされ、全部門を受賞している。前述の映画の脚本家ピーター・モーガンがクリエイター。シリーズ1の放送がスタートしたのが2016年の11月で、シリーズ2が翌年。当時、新人だった英国女優クレア・フォイがエリザベス2世を演じている。

© 2016 Netflix

冒頭は国王エドワード8世(女王の叔父)が即位から1年もたたずに、王太子時代から交際のあった離婚歴のあるアメリカ人女性との結婚を望んだ結果、議会と反発して国務を放棄。急遽、父親ジョージ6世が国王となっていく様子を無邪気だった王妃エリザベスが見つめるエピソード。そして恋愛、結婚、父の死と、エリザベス女王として即位するまでの若年期を中心に物語が展開される。

周囲から、女王としてのあり方を指図されるなかで、自らの女王の姿を確率していくシーンなどは見応えがあり、特に、誰よりも華やかで美しかった妹が妻子のある男性と恋に落ち、姉としての立場を捨ててその恋愛を引き裂くなど、ドラマ化されているとはいえ、女優クレア・フォイの演技は迫真せまった女王の姿を映し出している。

© 2016 Netflix