Jul 19, 2019 column

伝説的ホラー映画の復活&80年代ブーム、その背景にあるものとは?

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7月19日公開の『チャイルド・プレイ』は、ホラー映画の“レジェンド”と呼んでもいい人気キャラ、チャッキーが復活することで話題を呼んでいる。最新のリブート作品ながら、オリジナルが公開された80年代テイストも込められており、これは近年の流れに乗った作品でもあるのだ。ここ数年、ホラーの名作が再生産される傾向が高まり、とくに“80年代”というキーワードがそのブームを後押ししている。『チャイルド・プレイ』の新作をきっかけに、こうしたブームを検証してみよう。

1988年のオリジナル版『チャイルド・プレイ』

日本では1989年(全米は前年の1988年)に公開された『チャイルド・プレイ』は、2.8億円(配給収入)で同年の洋画では21位。スターも出ていないホラー映画としては、なかなかの健闘といえるスマッシュヒットだった。ちなみに22位が『ペット・セメタリー』で、1970年代から始まった強烈かつ大胆なホラー映画ブームの終盤を飾った意欲作ととらえてもいい。

70年代には『エクソシスト』、『オーメン』、『サスペリア』といったホラー作品が世界的ブームを起こして伝説化。さらに70年代後半から80年代にかけて『ハロウィン』、『13日の金曜日』、『エルム街の悪夢』などから人気の殺人鬼キャラが誕生し、まさに“見世物”として観客を興奮させた。その流れで登場したのが、『チャイルド・プレイ』のチャッキーだった。

1988年版『チャイルド・プレイ』(≪最終盤≫ Blu-ray 発売中) ©1988 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.

殺人鬼チャールズ・リー・レイの魂が、ブードゥー教の秘術で人形に乗り移り、人間に襲いかかるという、80年代映画らしい荒唐無稽なストーリー。ちなみに殺人鬼の名前は、チャールズ・マンソン(有名な殺人者)、リー・ハーヴェイ・オズワルド(ジョン・F・ケネディの狙撃犯)、ジェームズ・アール・レイ(マーティン・ルーサー・キングの暗殺犯)を引用している。

殺人人形“チャッキー”は、アニマトロニクス、身長の低い俳優、子役によって演じ分けられ、目や口が多少動くものの、基本は“無表情”の攻撃が逆に不気味さを倍増。映画を観ていない人にもチャッキーのキャラは話題となり、その後、ジェイソンやフレディと肩を並べる人気ホラーキャラとして定着した。チャッキーは2018年にスティーヴン・スピルバーグ監督の『レディ・プレイヤー1』にも登場したし、ユニバーサル・スタジオでアトラクションになるほどで、そのインパクトは今でも絶大である。

当然のごとく『チャイルド・プレイ』はシリーズ化され、2017年の第7作まで続くのだが、はっきり言って、回を追うごとに加速度的にグダグダな仕上がりになったのも事実。そして今回、すべてをリセットするかのごとく完成したのが、新たな『チャイルド・プレイ』なのである。

最新版は現代らしさ×80年代オマージュ

全米の公開日、6月21日は、狙ったかのように『トイ・ストーリー4』と同じ。両作とも、おもちゃが生きているように変貌する設定で、持ち主の名前がアンディというのも同じ(今回の『トイ・ストーリー4』にはアンディは出てこない)。日本は1週違いの公開となる。

今回の『チャイルド・プレイ』の設定には、現在進行形のテクノロジーが反映され、まさに意味のあるリブートだ。それは、人工知能(AI)。AI搭載の人気製品“バディ人形”の一体を、オリジナル版と同じ名前のアンディ少年が手にする。PCなどでプログラミングして、あとは日常生活から自動的にどんどん学習するのが、バディ人形の特徴。もちろんワイヤレスでスマホなどから操作可能だし、自宅の電気製品もともリンクして…と、これはもう“人形”というより“ロボット”のレベル。やがて自ら“チャッキー”と名乗ったその人形は暴走するのだが、AIなのでその暴走はリアルに説得力を持つのだ。このあたりが、現代の映画らしいところ。

とはいえ、たとえば『アイ,ロボット』などのようなAIが反乱を起こす映画と大きく違うのは、この『チャイルド・プレイ』が80年代のアナログ的魅力をしっかりキープしているところ。CG全盛のこの時代に、撮影には関節を電気で動かすアナログの人形も使っているし、CGによる表情の変化もやりすぎになっていない。

しかも80年代へのオマージュがたっぷり。チャッキーの指先に光がともり、テレビを観て人間の嗜好を学習する(観る映画がこれまた最高。しかも70年代の第1作でなく、80年代の“パート2”であることがツボ)。アンディはやたら赤いパーカーを着ている。これらはすべて『E.T.』と同じだ。さらに『ロボコップ』と同じセリフが出てくるし、チャッキーの声を担当したのがマーク・ハミルのためか、『スター・ウォーズ』がらみの笑えるネタも登場する。殺人描写には、オリジナルの『チャイルド・プレイ』にそっくりの演出や小道具も用意されているのだ。要するに、過剰なあまりに“怖い”を通り越して“笑っちゃう”ほどのシーンもある、ということ。そしてこの点こそ、70~80年代ホラーの魅力だったと再認識できるのだ。