Jul 19, 2019 column

伝説的ホラー映画の復活&80年代ブーム、その背景にあるものとは?

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名作ホラー復活&80年代ブーム

この『チャイルド・プレイ』に限らず、ここ数年、『サスペリア』(77年)、『ハロウィン』(78年)といった伝説的ホラーが新作として復活している。少し前だが、『キャリー』(76年)もリメイクされた。もちろん、映画の世界で“リメイク”の量産はいまに始まったことではないが、今度の『チャイルド・プレイ』が示すように、かつてのホラー映画の魅力だった原初的なスリル、映画ならではのやりすぎ感、作り物感が、改めて求められているのは事実のよう。

映画に限らず、何かと最近、“表現の自由”と言いつつも、炎上に気をつかって甘めの表現が増えている中、ホラー映画なら強烈描写もOKという言い訳ができる。70~80年代のホラーを観て育ったクリエイターたちが、自分たちが経験した恐怖の根源を再生させたい欲望も、1つの要因だろう。よく流行は“30年周期”と言われるように、映画界ではここ10年くらい、80年代ブームが静かに続いており、前述の『レディ・プレイヤー1』の他にも、80年代のジョン・ヒューズ監督の青春映画にオマージュを与えた『スパイダーマン:ホームカミング』(17年)などが挙げられる。ホラーに近いスリラーでも、今年の秋に公開されるイザベル・ユペール主演の『グレタ(原題)』は、『危険な情事』(87年)や『ミザリー』(90年)をもろに連想される“やりすぎ描写”が持ち味の作品だ。

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』(Blu-ray・DVD 発売中) IT © 2017 Warner Bros. Entertainment Inc. and RatPac-Dune Entertainment LLC. All rights reserved.

ホラーと80年代が結びつき、2017年に大ヒットを記録したのが『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』。同じスティーヴン・キング原作の、80年代の名作『スタンド・バイ・ミー』(86年)の世界も受け継いでいた。このテイストは、Netflixのドラマ『ストレンジャー・シングス 未知の世界』も同じで、やはり80年代の復活は確実なブームと言って間違いない。

ホラー映画のスマッシュヒットが続く理由

今年はこれから、『IT~』の続編で完結編である『IT/イット THE END “それ”が見えたら、終わり。』や、『シャイニング』(80年)の続編『ドクター・スリープ』が公開予定で、さらに80年代+ホラーのブームは加速しそう。そしてそのブームを支えるのが、つねに刺激を求める観客の“需要”と、作り手側の“自由奔放なアイデア”で成立する、ホラーというジャンルの特性ではないか。スターを必要とせず、低予算で作った映画が大化けするのも、このジャンルはじつに多い。アイデアと才能を試すうえで、ホラーは最適なのだ。

ここ数年だけでも、 肉体関係で “あるもの”が感染する『イット・フォローズ』(14年)や、盲目の老人相手に音を出さずに闘う『ドント・ブリーズ』(16年)、同じく音を立てると襲われる『クワイエット・プレイス』(18年)、人種問題+コメディ色も入れ込んだ『ゲット・アウト』(17年)、同作のジョーダン・ピール監督の新作の『アス』(9月6日公開)、あらゆるホラーの要素をつぎ込んだ『へレディタリー/継承』(18年)など、ホラーのジャンルからはじつにバラエティ豊かで革新的作品が生まれ、しかも大きな評判につながるケースが目立つ。

『アス』(2019年9月6日公開) ©Universal Pictures

こうした途切れないブームを作り出すうえで、気鋭のスタジオ“A24”(『へレディタリー/継承』、『イット・カムズ・アット・ナイト』などを製作)や、プロデューサーのジェイソン・ブラム(『パラノーマル・アクティビティ』シリーズ、『パージ』シリーズ、『ハッピー・デス・デイ』シリーズ、『ハロウィン』、『ゲット・アウト』、M.ナイト・シャマランの『スプリット』などを製作)らのチャレンジ精神と勢いが後押しになっているのも事実だ。

80年代、およびホラーという、2つの要素のブームを実感している人にとって、新しい『チャイルド・プレイ』は最高に期待が高まる作品だろう。そして、その期待を上回る、怖さ、楽しさが待っていると断言したい。

文/斉藤博昭

公開情報
『チャイルド・プレイ』

最先端テクノロジー企業カスラン社の期待の新商品、“バディ人形”。引っ越しをして友達がいない少年アンディは、誕生日に音声認識やセンサー付きカメラ、高解像度画像認識などの機能が付いた高性能人形を母親からプレゼントされる。自らを“チャッキー”と名乗る人形だが、実は欠陥品だと判明。的外れな受け答えに最初はあきれるアンディだが、「君が一番の親友だよ」と話すチャッキーに次第に夢中になる。その後、“彼”が豹変することなど知らずに――。
監督:ラース・クレヴバーグ
脚本:タイラー・バートン・スミス
出演:オーブリー・プラザ、ガブリエル・ベイトマン、ブライアン・タイリー・ヘンリー、マーク・ハミル(声の出演)
配給:東和ピクチャーズ
公開中
© 2019 Orion Releasing LLC. All Rights Reserved.
CHILD’S PLAY is a trademark of Orion Pictures Corporation. All Rights Reserved.
公式サイト:https://childsplay.jp

DVD情報
『チャイルド・プレイ≪最終盤≫』

Blu-ray 通常版:4800円(税抜)
Blu-ray 2枚組:10000円(税抜)
発売中
キングレコード
©1988 Metro-Goldwyn-Mayer Studios Inc.

『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』

Blu-ray:2381円(税抜) DVD:1429円(税抜)
発売中 ※R-15作品
ワーナー・ブラザース ホームエンターテイメント
IT © 2017 Warner Bros. Entertainment Inc. and RatPac-Dune Entertainment LLC. All rights reserved.

公開情報
『アス』

2019年9月6日(金)公開
配給:東宝東和
©Universal Pictures