Apr 16, 2019 interview

岸田繁インタビュー【前編】:リラックマの世界を彩る音楽、くるりによる主題歌に込めた想い

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2003年に登場し、15年以上にわたって国内外で人気を博しているリラックマが、初のストップモーションアニメとして、4月19日(金)よりNetflixにて世界190カ国で配信される。リラックマやコリラックマ、キイロイトリと、彼らと生活を共にしているカオルさんの暮らしが描かれる「リラックマとカオルさん」に、音楽という形で彩りを添えているのが、くるりのフロントマンである岸田繁。これまでも映画『ジョゼと虎と魚たち』(03年)や『まほろ駅前多田便利軒』(11年)のほか、多くの劇中音楽を手掛けてきた彼が、本作の楽曲を制作するにあたりこだわったこととは――? その制作秘話を前・後編の2回に分けてお届けする。

楽曲制作時は「最初に受ける印象が決定的なものになります」

──まずは、今回のオファーがあった時の感想を教えてください。

えっと……、ありがとうございますって思いました(笑)。リラックマと言えば、やっぱり日本を代表するキャラクターですから。最初に絵コンテを見せていただき、撮影方法や動き方についてもご説明いただいたんですけど、その時は海外の作品にあるような感じかなと思っていたんです。でも、撮り進めていた映像を拝見した時に、かなり丁寧に作られていたことに感服いたしまして……。これは相当頑張って撮ってらっしゃるんだなと思いました。

──楽曲を制作するにあたって、制作チームからのリクエストはあったんですか?

具体的な注文っていうのはなかったですね。テンポとかについては、くるりで言うとこういう曲でっていうのはあったと思うんですけど、(楽曲が)上がってみたら全然違う感じの曲になってました(笑)。

──では、実際に楽曲を制作していく中で、岸田さん自身が意識したこと、こだわった部分はどういったところでしたか?

いただいた映像を観ながら思い付いたことをスケッチしていったんですけど、音を作る中で意識したのは、リラックマやコリラックマ、キイロイトリの存在感と、彼らが巻き込まれるちょっとした出来事に対して、あんまり考え込まないようにすることでした。彼らの動きを素直に音楽にしていくというか。変化が欲しいなと思った時は、例えば1音だけ変化させるとかして、あくまでも作り込みすぎないように、音数はかなり少なめにしています。音色はアナログで人肌感がある感じとデジタルな感じを敢えてミックスして。というのも、リラックマって、僕の中ではすごくシンメトリー感があるんですよ。柔らかそうで可愛いんですけど、妙なデジタル感があると思うので、音でもそれを表現したいと思ったんです。物語の中でも、動くけども動いてへんみたいな(笑)。その感じは、どのシーンを作る時もすごく意識しましたね。

──そういった作り方は、これまでに岸田さんが手掛けた他の作品のサウンドトラックにも共通するものですか?

そうですね。やっぱり、色味とか手触りっていうのが。もし、この「リラックマとカオルさん」のお話が、実写やったらまた違う音の選び方にしていたと思うし、完全なアニメーションやったらまた全然違ってたやろうなと思います。もしかしたら、カオルさんの髪の色が(茶色ではなく)真っ黒やったら、違う曲になっていたかもしれない。とにかく、サウンドトラックを作る時……そうじゃない時もそうなんですけど、最初にパッと受ける印象が決定的なものになります。