不毛な恋愛をしてきたアラサー美人が婚活を始めたことから、浮かび上がってくる男女間の滑稽さや女同士の友情の生々しさ、アラサー女子の毒々しさ。そんな悲喜こもごもを描いた、タイトルもそのものズバリの『美人が婚活してみたら』が3月23日(土)に公開される。映画用の脚本は今回が初めてというシソンヌのじろうと、『勝手にふるえてろ』(17年)も高く評価された大九明子監督に制作秘話を聞いた。
人生“初”の土下座に、苦しむ様子のドキュメンタリー案も出た!?
──最初に企画・プロデューサーの大森氏勝さんから、お二人を組ませたいというお話を聞いたときはいかがでしたか?
大九 私はシンプルに、2017年の12月に「来年の2月はスケジュール空いてますか?」と聞かれたんです。タイミング的に『勝手にふるえてろ』の公開後だったので、「一応空いてます」とお答えしたら、原作がこれで、じろうさんが脚本を書く沖縄映画祭用の映画があるというお話で。じろうさんなんて大変光栄な話だ、と私は思ったんですけど。
じろう 監督はお笑い狂ですからね(笑)。
大九 狂”というより、じろうさんを尊敬しているし、すごく面白い方だし、こんな頭の良い方とご一緒できるなんてすごい! と、私は(強調しながら)、思っていたんです。
じろう あはははははは(笑)。
大九 ところが(笑)、じろうさん、1回お断りになっているんですよね?
じろう そうですね。僕は11月末くらいに映画の脚本をやってくれないかと言われて。その時、舞台でずっと地方を回っていたのもあって、スケジュールがめちゃくちゃきつかったので1回断ったんですけど、再度、口説きに来られて。原作があると聞いたので、だったら原作通りに書けばいいだけなのかな? と思って、すごく軽い気持ちで受けたんです。沖縄映画祭だしって(笑)。
──沖縄映画祭は、よしもとさんが深く関わっていらっしゃいますもんね。
じろう よしもとの芸人はみんな沖縄映画祭でめっちゃ働かされますから(笑)。僕、普段は映画をあんまり観ないので、実は監督のことも存じ上げてなくて、(脚本を書くと)決まってから『勝手にふるえてろ』を観たんです。
──でも書けなくて、土下座をして降りようとしていたとか。
じろう そうですね、人生初の土下座。
大九 あ、人生初だったんですか? 部屋に入ってくるやいなや、この笑顔でスコーンと軽やかに土下座したんですよ。
じろう あはははははは(笑)。
大九 だからこちらも「はいはい、もうそういう面白いのはいいです」っていう気分だったんですよ。「(土下座に)慣れてるな~」とも思っていましたし。
じろう そんな、しょっちゅう土下座してないですよ(笑)。
大九 私自身は何も知らず、ただ筆に詰まってるっていう程度にしか認識していなかったので、「まぁ、お立ちなさい」「何がお辛いんですか?」みたいな感じで、普通に受け止めていたんですよね。後から本気で降りたがっていたというのを聞いたんです。
じろう 僕的には、本気でもう降ろしてほしいと思ってたんですよ。すごいストレスで(笑)。
──でも監督とお話された後は一晩で書けたんですよね?
じろう そうですね、なぜか(笑)。
大九 その時、「僕は面白いものしか書けないんです」っておっしゃったんですけど、芸人さんとしてすごく真っ当な当然の発言なんですよね。大森さんが、自分が婚活していてこの原作をやりたかったから、私と組みたいと思ってくれていたから、じろうさんとやりたいと思っていたから、というこの3つを合わせるのが、そもそも無茶なんですよ(笑)。だけどその無茶が何となく形になって映画が完成し、今に至るということなんだと思います(笑)。
──なるほど。
大九 だからじろうさんが書けないと言った時、今からならいっそじろうさんのオリジナルを書いた方が早いかもしれないとか、もしくは書けないで苦しんでいる姿を私がドキュメンタリーで撮るとか、そういう案が出たくらいで。映画用の脚本を一度も書いたことがなくて、婚活もしたことがなくて、しかも男性のじろうさんに、何でこの原作やねんって、私でも思いました(笑)。でもそういう変な化学反応みたいなものを期待して、人と人、人と企画をくっつけるのがプロデューサーの手腕なんでしょうね。