コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第220回
脚本家の宮藤官九郎が、6月11日にディファ有明で行われた、映画『パンク侍、斬られて候』の完成披露舞台挨拶イベントに出席した。
満島ひかりの降板などすったもんだがありながらも、無事に三宅弘城&森川葵主演で、11月20日より下北沢の本多劇場にて上演されることが決定した、舞台『ロミオとジュリエット』の演出と脚色も手掛けている宮藤だが、今回、脚本を担当した映画『パンク侍、斬られて候』の出来にも、「面白いです。皆さんが思っている以上に面白いです」と自信をのぞかせていた。
不朽の名作『ロミオとジュリエット』では、許されぬ恋に身を投じる男女の物語が描かれているが、今までの人生において一番パンクだったことについて明かした宮藤は「15年ほど前に、暗い吞み屋の中で石井監督が一人でいらっしゃったので声を掛けなきゃと思ったんですが、もし石井監督じゃなかったらどうしようと思ってためらっていたら店を出て行ってしまって、急いで店の人に「領収書に何て書きました?」って聞いて、それを確認してすぐに追い掛けたんです(笑)」と、恋い焦がれた石井岳龍監督との出会いを振り返っていた。
一方、その石井監督だが、約8割のスタッフ・キャストから“一番パンクな人”として支持を集めており、主演の綾野剛(【掛十之進】役)も「初日に監督から『剛くん、今回は宇宙と戦ってほしい』と言われて(笑)。ヤバさが増しました」と告白すると、【ろん】役の北川景子は「(現場に)マズいセットがあったので、その状況で『宇宙と戦ってほしい』と言われると、私も「あ、分かりました」って答えちゃってました(笑)」と照れ笑い。しかし、当の石井監督はというと「真剣にやってるだけなんで。それがヤバいとかは分からないんですよ」と頭を悩ませていた。
そんな“ヤバい”石井監督と、天才・宮藤官九郎がタッグを組んで製作した今回の映画について、改めて綾野は「宮藤さんと石井監督だけで十分ですよね。間違いなく劇薬になると思ってました」と、その化学反応に満足気な表情を浮かべていた。
イベントにはその他、出演の東出昌大、染谷将太、浅野忠信、若葉竜也、近藤公園、國村隼、豊川悦司が出席した。
映画『パンク侍、斬られて候』(東映配給)
映画『パンク侍、斬られて候』(東映配給)は、芥川賞作家・町田康が2004年に発表し、江戸時代を舞台に、隠密ミッションをめぐって繰り広げられる男たちの戦いと、謎の美女の運命を描いた異色時代小説を映画化した作品。
監督:石井岳龍 脚本:宮藤官九郎 出演:綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏、村上淳、若葉竜也、近藤公園、渋川清彦、國村隼、豊川悦司 ほか