小栗旬主演、福田雄一演出、大ヒット映画『銀魂』と同じ顔合わせで送るミュージカル『ヤングフランケンシュタイン』が公演中です。歌と踊りと笑いの数珠つなぎで、全2幕、3時間強が、あっという間。
はじめてミュージカルに挑んだ小栗旬さんの奮闘ぶりをお伝えするのと合わせて、『ラ・ラ・ランド』効果か、最近ミュージカルが身近になっている気配も感じられる中で、福田雄一さんのミュージカルの新しさについても考察します。
ミュージカルブームが来てる?
大ヒットしたミュージカル映画『ラ・ラ・ランド』の影響か、2017年はミュージカルが注目されているらしく、7月期の連続ドラマでは、『ウチの夫は仕事ができない』(日本テレビ)と『あいの結婚相談所』(テレビ朝日)が毎週のように、ミュージカル調に歌ったり踊ったりする場面を取り入れている。
前者は歌も踊りもお手のもののジャニーズの錦戸亮が、後者は、ミュージカル界のプリンス・山崎育三郎が歌ったり踊ったりしていて、その朝飯前感が見どころのひとつだ。
さらに、朝ドラ『ひよっこ』(NHK)は昭和歌謡やロックやフォーク、昼ドラ『やすらぎの郷』(テレビ朝日)は中島みゆきの楽曲を使って、まるで音楽劇のような様相を呈している。
ひと昔前のミュージカルは、一般的には、タモリがよく言っていた「突然歌い出す」ところについていけない印象を受けるところがあって、観る人を選ぶジャンルだった。それが、いまや、かなり世の中に違和感なく浸透し出している。その功労者のひとりが福田雄一だと言っても過言ではないと思う。
福田雄一とミュージカル
福田は、『勇者ヨシヒコ』シリーズや、映画『銀魂』がヒットしている、脚本家にして監督。彼が得意とするのは、メタドラマだ。それを簡単に説明すると、主となるAという物語と平行して、Aを客観視したBという物語も描く。例えば、A男という役を演じているB男という俳優の思考や事情まで物語られるようなことだ。つまり、物語にツッコミを入れるということ。今回、福田が、ブロードウェイミュージカルの日本語上演台本と演出を手掛けた『ヤングフランケンシュタイン』(以下ヤンフラ)でも、ミュージカル俳優ではないムロツヨシの役や歌を、劇中で、本人がツッコみまくって楽しませる。
最近のドラマにおけるミュージカルの役割は、日常に突然、ミュージカルという非日常が入ってきたらおかしいよネとか気持ちが上がるよネというようなメタ化として使われることが多い。そういうふうにミュージカルを開き直って観ることができるようになったのは、福田雄一が物語にツッコむことを一般化したからだと思うのだ。
こんなふうに、エンタメ界を一変させたクリエーターのひとり・福田雄一は、これまでも、ムロの他にも山田孝之といった、ミュージカル経験のない俳優たちを積極的にミュージカルに出演させてきた。そして、今回の『ヤンフラ』では、小栗旬を主役に据えた。初めてミュージカルに挑む小栗旬が、これまた、ミュージカルに新しい風を吹かせていたことに関しては、あとで詳しく触れることにして、まずは、作品の概要を説明しよう。