コラム 佐々木誠の『映画記者は今日も行く。』第120回
女優の吉岡里帆が、8月4日にユーロライブで行われた、映画『STAR SAND -星砂物語-』の初日舞台挨拶に登壇した。
1983年公開の『戦場のメリークリスマス』では大島渚監督の助監督を務め、2003年公開の『スパイ・ゾルゲ』(篠田正浩監督)には俳優として出演、2007年公開の『明日への遺言』では、小泉堯史監督と共同で脚本を執筆するなど、日本映画や日本の文化にとても造詣が深い、アメリカ人作家のロジャー・パルバース氏が初めてメガホンを執ったのが、本作『STAR SAND -星砂物語-』である。
太平洋戦争下の沖縄を舞台にした作品だが、他の戦争映画との違いについて、現代を生きる女子大生【保坂志保】役を務めた吉岡は「戦争の残虐な部分を描くのではなくて、普通の人たちが、普通に恋をして、普通に生きて、普通に食べて、普通に幸せになる姿をちゃんと描いているんです」と熱弁していた。
パルバース氏自身はとても明るく饒舌な人物で、日本語も堪能。壇上では、常にジョークを交えながら軽妙なトークを繰り広げていた。御年73歳とは思えぬほど生き生きとした眼をしており、日本で映画が撮れたことをことさらに喜んでいた。
パルバース監督の人柄がそうさせたのか、脱走兵【岩淵隆康】役の満島真之介は「沖縄の作品というか、戦時中のものを扱った映画に関しては、これまでにも何度かオファーをもらっていたんですが、勇気が出ず一歩を踏み出せなかったんです。それは僕がクォーターなので、沖縄戦がなかったら僕たち家族はいないからです。でも、日本と長く関わりを持つロジャー・パルバース監督なら、一歩を踏み出せるかもしれないと、日本で映画を作るという監督の勇気に一緒に乗っかりたいと思ったんです」と、胸の内を明かしていた。
そんなパルバース監督は「三浦さんは日本のロバート・ミッチャム」、「満島さんは日本のカーク・ダグラス」、「織田さんは日本のエリザベス・テイラー」、「吉岡さんは日本のオードリー・ヘプバーン」と、満島、吉岡のほか、一緒に登壇した【梅野洋海】役の織田梨沙、【岩淵一】役の三浦貴大ら日本人キャスト4名の存在感を、ハリウッドの名優にたとえてこう称し、「この人たちは世界的な俳優になります!いや、なってください!!」と熱いエールを送っていた。
特に、吉岡に対しては[Good things come in small packages.(良いものは小包みに入ってやってくる)]という英語のことわざを用いて、「頭が良くて、何でもできる」と絶賛していた。
なお、撮影が別々だったため、今回が3人との初対面となった吉岡は「すごく嬉しいです。やっと会えたぁ」と笑顔を見せると、満島も「吉岡さんが来てくれて良かったです。今日来てくれなかったら、『ごめん、愛してない』って言いそうだったもん(笑)」と、現在吉岡が出演しているテレビドラマ(『ごめん、愛してる』)のタイトルにひっかけて、会場の笑いを誘っていたのであった。
映画『STAR SAND -星砂物語-』(The STAR SAND Team配給)
映画『STAR SAND -星砂物語-』(The STAR SAND Team配給)は、日本映画や日本文化に造詣が深いアメリカ人作家ロジャー・パルバースが、太平洋戦争下の沖縄を舞台に描いた自身の小説を映画化した初監督作品。
監督・脚本:ロジャー・パルバース 出演:織田梨沙、満島真之介、ブランドン・マクレランド、三浦貴大、吉岡里帆、寺島しのぶ、渡辺真起子、石橋蓮司、緑魔子、ダンカン・ハミルトン、近谷浩二、沼田康弘 ほか