Jun 23, 2025 interview

早川千絵 監督&主演・鈴木唯が語る 感受性という海を、ひとりで泳ぎきった少女の物語『ルノワール』

A A
SHARE

日本がバブル経済絶頂期にあった、1980年代のある夏。11歳のフキは、両親と3人で郊外に暮らしている。ときには大人たちを戸惑わせるほどの豊かな感受性をもつ彼女は、得意の想像力を膨らませながら、自由気ままな夏休みを過ごしていた。だが、闘病中の父と、仕事に追われる母の間にはいつしか大きな溝が生まれ、フキの日常も否応なしに揺らいでいく――。

長編デビュー作『PLAN 75』(2022) で国内外に高い評価を得た早川千絵の監督・脚本による長編映画2作目。主人公のフキに鈴木唯、さらに母・詩子役に石田ひかり、父・圭司役にリリー・フランキーらの実力派俳優が脇を固める。

予告編制作会社バカ・ザ・バッカ代表の池ノ辺直子が映画大好きな業界の人たちと語り合う『映画は愛よ!』、今回は、『ルノワール』の早川千絵監督と主演の鈴木唯さんに、本作品や映画への思いなどを伺いました。

最初のオーディションで「また会いたいです」

池ノ辺 今回の『ルノワール』は長編第2作目ですね。前作から何年経ってますか?

早川 3年ですね。

池ノ辺 でも構想はもっと前からあったんですよね。

早川 脚本を書き始めたのは2020年の12月で、それからしばらく放っておいた感じです。

鈴木 2020年からだったら、完成までで5年経ったってことですか?

早川 長いですよね。

池ノ辺 監督がこの題材にしようと思ったのはどうしてですか。

早川 『PLAN 75』の準備中にコロナ禍になってしまって、割と時間が空いてしまったんです。その時に、ちょうど脚本ワークショップの募集がかかっていたので、これで何か書いてみるかというので受けることにしました。じゃあ何を書こうかとなった時に、自分が映画に惹かれていった時のことを思い出したんです。自分の感情がぐらっと揺れるような映画が作りたい、そういう思いが自分の中にあるのですが、それはどこから来るのかというと、子どもの頃、すごく感受性が強くて、だから映画や小説、芸術にものすごく心が惹かれていたんですね。それで、その頃のことを書きたいと思ったのが最初でした。

鈴木 オーディションの時に、監督は「この映画は自分が小さい頃に経験したことをモチーフにしている」と言ってました。

池ノ辺 (鈴木)唯さんはオーディションで決めたんですよね。それはいつだったんですか。

早川 唯ちゃんと会ったのは2023年の12月、撮影の前の年に会いました。とにかく主人公が見つからなければこの映画は撮れないので、早めに動こうと、割と早い段階から探し始めたんです。その最初のオーディションで出会ったのが唯ちゃんでした。

池ノ辺 唯さんは、オーディションを受けてみてどうでしたか。

鈴木 初めて会ったときはすごく優しそうな監督さんだなと思いました。私は映画はあまり出演していなくて、このオーディションは久しぶりの映画のオーディションでした。普通のオーディションでは台本を配られて演技をするのに、今回は、超能力の世界とかピアノの音に合わせて弾くアートのような表現をする、普通とは全然違うオーディションだったので、すごくおもしろかったし楽しかったです。

早川 緊張させたくなくて、場所も、ハウススタジオみたいなところに来てもらったんです。リビングでソファがあるところで、遊ぶ感じで行いました。そういえば、オーディションが終わって帰る時に、唯ちゃんが「また会いたいです」と言って帰っていったの覚えてる?

鈴木 覚えてないです (笑) 。オーディションの内容は覚えているけど。

早川 「また会いたいです」と言ってくれて、私もまた会いたいなと思っていたの。

池ノ辺 それで唯さんに決まったわけですが、「決まったよ」と言われた時はどうでしたか。

鈴木 それはもうとてもとっても嬉しくて、家の中を走り回ったんです。でも嬉しかったのが、実は海外に行けるというところだったんです。海外に行ったことがなくて、いつか行きたいと思っていたんです。だから、オーディションに受かったことはもちろん嬉しかったのですが、それ以上に、撮影で海外に行けるということがもう、すごく嬉しくて家の中を走り回ってました(笑)。