【各界著名人 コメント一覧】
■あたそ(ライター)
人の心の隙間や空白を埋めるのは他者の存在でしかなく、欠点だらけのふたりがどうしようもなく求めあう姿は不完全で、みっともない。だから美しいのかもしれない。佐藤泰志原作の映画に間違いはないと再確認できた。
■新井英樹(漫画家)
振り返って動きを止めてる人間を見つめる「だるまさんがころんだ」ごっこ。動きを止めて抑えていたものを小さく動かす瞬間と動き出した時間に答えはなくても、生きる歓びは見つけられる。人生は小さく期待できる!
■磯村勇斗(俳優)
慎一と裕子の静かに意識し合う距離感が絶妙に美しい。そんな2人の心を露わにしているかのように、鳥の鳴き声が心を揺さぶる。作家としての慎一のもがき、そして、彼の内側に潜む凶暴性。プレハブの窓から覗く慎一の目から、現在の生き様を伺える。その姿がとても印象的でした。
■宇垣美里(フリーアナウンサー)
どうしたって傷つきたくないから、期待するのをやめた癖して、漂う寂しさを持て余す。不器用な2人が、ただ痛々しくてやるせない。でもそんな不条理な人間同士だからこそ、癒せる傷があり、結べる関係がある。役者たちの体当たりの演技の先に、歪に光る希望のようなものを見た。
■カツセマサヒコ(小説家)
甘く怠惰な時間が一生続かないことくらい、誰だってわかっている。それでも今この瞬間、傷が少しでも癒えるのなら、僕もまた2人と同じような決断をしていたのかもしれない。
■今日マチ子(漫画家)
母屋と離れ、隣り合う箱を行き来するふたり。孤独な人間が寄り添う一瞬の暖かさは、開いては消える打ち上げ花火のようだ。
■こだま(エッセイスト)
息が詰まる夜の終わりに、こんな光が射す瞬間があるのなら、無様でも生きてみようと思える。多くを語らない、吐き出せない人たちの、はじめの一歩。
■しんのすけ(映画感想TikTokクリエイター)
良い映画は俳優の可能性を観客に示してくれる。次の瞬間何をしてしまうか予想が出来ない心が不安定な主人公・慎一を、あらゆる無表情を使い分けて山田裕貴は演じ切った。人の生活空間がSNSで拡大した今、この映画は”幸福とは何か”を我々に問うてくるのだ。
■遠野遥(作家)
この映画を観たことで、暴力について考える機会を得た。ここのところ暴力について考える機会がなかったという人にこそ、この映画を推薦したい。
■内藤みか(作家)
夜、ひとりで泣いたことがある人に、おすすめしたい映画。シングルマザーは、夜にしか泣けない。子どもが寝静まってからじゃないと、涙を流せない。そしていつもひとりで泣いているから、誰にも気づいてもらえない。世界の隅っこで愛を求めて震えているこのヒロインに深く共感し、のめり込んで観た。
■ものすごい愛(エッセイスト)
重なる後悔、大きな失望、不寛容な周囲、孤独な日々‥‥様々な息苦しさから解放されたがっているはずなのに、彼らはどこまでも刹那的で不自由だった。でも、私たちが口を出していい謂れはない。だって彼らと私たちは無関係な他人なのだから。
■山下紘加(小説家)
映画の中盤で、慎一は服の袖をめくり、クラゲに刺された腕を裕子に見せる。赤く腫れて痛みを伴う痕を、彼女は細い指先でなぞり、舌で舐める。舌の熱さが強張った心をほぐし、傷が癒えていくとともに、新たな関係性が紡がれる。互いが最も心地よいと思える距離を保ちながら共棲していくラストは、新しい生き方の形を提示してくれたようだった。
若くして小説家デビューするも、その後は鳴かず飛ばず、同棲中だった恋人にも去られ、鬱屈とした日々を送る慎一。そんな彼のもとに、友人の元妻、裕子が、幼い息子アキラを連れて引っ越してくる。慎一が恋人と暮らしていた一軒家を、離婚して行き場を失った2人に提供し、自身は離れのプレハブで寝起きするという奇妙な共同生活。自分自身への苛立ちから身勝手に他者を傷つけてきた慎一は、そんな自らの無様な姿を、夜ごと終わりのない物語へと綴ってゆく。一方の裕子は、アキラが眠りにつくと一人町へと繰り出し、行きずりの男たちと逢瀬を重ねる。親として人として強くあらねばと言う思いと、埋めがたい孤独との間でバランスを保とうと彼女もまた苦しんでいた。慎一と裕子はお互い深入りしないよう距離を保ちながら、3人で過ごす表面的には穏やかな日々を重ねてゆく。だが2人とも、未だ前に進む一歩を踏み出せずにいた。そして、ある夜‥‥。
監督:城定秀夫
原作:佐藤泰志「夜、⿃たちが啼く」(所収「⼤きなハードルと⼩さなハードル」河出⽂庫刊)
出演:⼭⽥裕貴、松本まりか、森優理斗、中村ゆりか、カトウシンスケ / 藤田朋子 / 宇野祥平、吉田浩太、縄田カノン、加治将樹
製作・配給:クロックワークス
© 2022 クロックワークス
2022年12月9日(金) 新宿ピカデリーほか全国公開
公式サイト yorutori-movie.com