変わり者の芳賀一郎こと「春画先生」と、しっかり者の弟子・弓子の姿を通して、好きなものにのめり込んでいく者たちの悦びと情熱、そして究極の“推し活”を描く異色のコメディ、映画『春画先生』が公開される。
春画とは、平安時代からはじまり江戸時代の木版画技術の発達で全盛期を迎えた、人間の性的な交わりを描いた画。これまで春画は映画でもタブーとされ、性器部分の描写はボカシ加工が必要だったが、日本映画史上初、R15+認証による無修正で浮世絵春画がスクリーンに映し出される。本作は、長らく日本美術史のタブーとされつつも、世界に誇るべき江戸の文化の裏の華である春画の奥深い魅力を、春画先生が真面目に可笑しく教えてくれる作品だ。
主演は『劇場版 きのう何食べた?』『臨場 劇場版』など数々の個性的な役柄を演じてきた内野聖陽。高名な研究者でありながらも社会性があるとはいいがたく、好きなことに没頭するオタク的なこじらせ中年男性。弓子という春画を語り合う弟子ができたことで、春画大全の執筆への意欲を取り戻していく。癖のある性格がどこか可愛らしくほっとけない魅力を生み出してはいるものの、特異な性癖の持ち主でもある。そんな「春画先生」を内野聖陽が見事に怪演、新境地を開いた。
ヒロインは今注目の若手女優、北香那。若手ながら物怖じしないヒロインぶりで見事に演技で応えた。執筆へのエネルギーの元となる弓子は、一途でしっかり者の女性。芳賀への恋心に突っ走っていくその姿は、可憐で清々しいながらもタフそのもの。滑稽な世界感を大真面目に熱演する師弟コンビの、振り切った演技が本作最大の見どころだ。
また、原作・監督・脚本を『さよならくちびる』『月光の囁き』『害虫』等で知られる塩田明彦が務め、すばらしいタッグが実現した。