1960年9月20日に開業した映画館「丸の内TOEI」の閉館に向けた「さよなら 丸の内TOEI」プロジェクト。この度6月28日(土)には『ビー・バップ・ハイスクール』が上映され、上映後舞台挨拶に仲村トオルが登壇した。

仲村は1985年、本作『ビー・バップ・ハイスクール』で俳優デビュー。最終オーディションは東映会館で行われた。イベントでは、40年ぶりにスクリーンで鑑賞したという本作の感想や撮影秘話が語られ、イベント中には、ロケ地の静岡県静岡市清水区で40周年記念イベント「清水ビー・バップ・ハイスクール高校与太郎祭」の開催も発表された。
満席の観客から熱い拍手で迎えられ、映画主題歌 中山美穂「BE-BOP-HIGHSCHOOL」に乗せ登場した仲村は「40年前の僕のデビュー作を上映してくださった東映の皆さん、そしてそれを観に来てくださった客席の皆さん、本当にありがとうございます」と感謝を述べ、イベントは和やかな雰囲気でスタートした。
40年ぶりにスクリーンで自身のデビュー作を鑑賞したという仲村は「最初はちょっと罰ゲームかなという感じがあるくらい、自分の恥ずかしいところとか‥‥滑舌悪い!パンチ弱弱しい!とか(笑)。自分にいっぱいダメ出ししてました。でも途中からだんだん笑いたくなってきて、最後は『本当みんな頑張ってたな』と、スクリーンフレームの外側にいるスタッフの人たちも含めて、本当みんな頑張って撮ったなと思い出して、ちょっと感動しました」と振り返る。


俳優デビューのきっかけは、雑誌の募集広告だったという仲村は、当時のオーディション会場の雰囲気も鮮明に記憶しているという。「もう、すごかったです。この映画に出ていたような人たちだらけで。『ケンカしたくてしょうがねえ』みたいなバチバチの空気が飛び交っていて。これは間違ったなと(笑)。役作りの俳優さんたちではなく、ほぼ本物の方たちでした。僕みたいな普通の大学生はごくごく少数派でしたね」と当時の様子を明かした。
本作はアクションが見どころの一つ。アクション監督の高瀬将嗣の指導の下、アクションの稽古から始まったそう。特に危険だったのは、走行中の電車のドアから次々と敵が落ちていく鉄橋のシーン。「あれは、高瀬さんが『行け!』『蹴れ!』と声を出す合図だけを信じてやっていました。僕がギリギリで避ける鉄柱も、当時は距離感がわかっていなくて、後で聞いたら、(鉄柱が来るたびに、敵役の)瀬木(一将)さんが僕を引っ張り上げてくれていたそうです。あの川は当時干潮で浅かったらしく、落ちた瀬木さんの顔がすぐに出てきたので、水深はあまりなかったんだと思います」と当時を振り返る。

ヒロイン・中山美穂の話題になると「当時、美穂ちゃんは15歳で僕は20歳。すごく年下に見えていたことや既にトップクラスのアイドルで近寄りがたいみたいなものがあり、そんなに現場で話をした記憶はないのですが、今日(映画を)観て、思い出したことがありました。夜の撮影で真っ暗な畳の部屋で一緒に出番を待っていた時、美穂ちゃんの目が凄い光って見えてて『なんかこんなところで見ると猫みたいだね』と言ったら『そうだよ。そう簡単に尻尾は振らないし、こびないし』と答えていました。今思うと当時15歳の女の子にしてはずいぶん大人っぽい答えだったな」とほほえましいエピソードを明かした。
相棒・清水宏次朗の話題になると「清水さんは年齢が1個上で、芸能の仕事をしていたので頼りになる先輩でした。昔、『腹減りましたね』と言ったところ、『そうめんで良かったらウチで食ってく?』と言ってくれて、宏次朗さんがそうめんを茹でてくれて、梅干しもたたいてくれたり、ネギも刻んでくれたり、ごちそうになったこともありました」と当時を思い返す。
イベントも終盤に向かう中、舘ひろしと柴田恭兵からのサプライズビデオメッセージも上映。2人は『あぶない刑事』のタカとユージさながらの軽妙なやり取りでそれぞれ「トオル」と呼び掛け、仲村への愛あるメッセージを寄せた。本作と、柴田と薬師丸ひろ子が共演した映画『野蛮人のように』は2本立て上映で、当時舞台挨拶会場で仲村を見かけた柴田は「大丈夫かな?」という印象を抱いたそう。そんなメッセージに対し仲村は「恭兵さんに『大丈夫かな』と思われていたのだろうなと感じてはいたが、僕も『あぶない刑事』が始まったばかりのころは『舘さん大丈夫かな』と思ったことはあります」と語り、会場を沸かせた。

7月27日で閉館する丸の内TOEIについて聞かれると「『ビー・バップ・ハイスクール』6作を始めとして、丸の内TOEIだけではなく、各地の直営館や各支社の宣伝部の方たちにお世話になりました。劇場を支えてくださっていた、まだ僕がお会いできていない多くの方々に改めて、ありがとうございました。東映の映画館を支えてくださった方、東映の映画館に来てくださった皆さん、本当にありがとうございました!」と感謝の言葉を述べた。
最後に、自身を育てた東映、セントラル・アーツについて、「この建物(東映会館)の8階で、僕は俳優としての産声をあげた赤ん坊で、まさに産院。セントラル・アーツは実家、『ビー・バップ・ハイスクール』は母校、『あぶない刑事』の現場は故郷だと思っています。東映の映画にたくさん出していただいたおかげで、東宝さんや松竹さんからお話がほとんど来ないということもありましたが(笑)、それも僕の俳優人生。お会いしたことのない、たくさんのスタッフの方々に支えられていたんだなと今更ながら感じています。本当にありがとうございました」と語り、舞台挨拶は締めくくられた。
「さよなら 丸の内TOEI」は、2025年5月9日(金)から7月27日(日)まで開催中。

往年の名作から最新作まで80タイトル以上を特集上映。そのほか、各種関連イベントが予定されている。
上映劇場:丸の内TOEI
提供:東映株式会社
2025年5月9日(金)から7月27日(日)まで開催中