Jan 10, 2021 news

映画『大コメ騒動』公開記念舞台挨拶 - 井上真央の「負けんまい」が今の世に響く

A A
SHARE
otocotoニュース

アカデミー賞受賞タッグが描く100年前の女性たちの戦い

『超高速!参勤交代』(14)で、第38回日本アカデミー賞優秀監督賞を受賞した本木克英監督最新作。主人公・松浦いと役を演じるのは、『八日目の蟬』(11)で、第35回アカデミー賞最優秀主演女優賞を受賞した俳優・井上真央。二人がタッグを組むのは『ゲゲゲの鬼太郎』(07)以来、2 度目となる。
その二人の新作『大コメ騒動』 (読み方:だいこめそうどう)は、1918(大正7)年、富山県の貧しい漁師町で起こった「米騒動」。日本の女性が初めて起こした市民運動ともいわれる出来事で、活躍したおかか=女性たちにスポットを当てたパワフルな作品である。

大コメ騒動
『大コメ騒動』 全国公開中  ©︎2021「大コメ騒動」製作委員会

[adinserter block=”2″]

この1918年という時代は、第一次世界大戦後の好景気に沸く一方で、スペイン風邪が世界的に大流行していた時代である。新型コロナウィルスのパンデミック、社会的格差、男女格差など、現世とリンクする点が多い本作。簡単に米騒動の物語とだけでは片付けられない奥深い内容となっている。

大コメ騒動
『大コメ騒動』 全国公開中  ©︎2021「大コメ騒動」製作委員会

完成披露イベントで見せた映画人たちの気概

2021年 1 月 9 日にスペースFS汐留で『大コメ騒動』マスコミ限定の公開記念舞台挨拶が行われ、本木克英監督、井上真央、室井滋、鈴木砂羽の 4 人が登壇した。本イベントは、緊急事態宣言が 発令されたことを受けて、当初予定していた観客への対面舞台挨拶を中止して、急遽用意された舞台であった。
何もしないという選択肢があったが、主演の井上真央が「こういうときだからこそメッセージを出すべき」と、映画ファンへのお披露目の場を間接的なアプローチに切り替え、この場が用意されたことを本木監督が語っていた。

冒頭から監督自身は地元富山での豪雪など、憂いが拭えないようで、それを知った井上が「負けんまいですよ」と勇気づける場面も。背中を押された本木監督は、本作の公開に際し「新作をこの時期に世に出すということが重要」と話しつつ、厳しい時期ではありつつも映画の火を絶やさない気概を覗かせた。横に座る俳優陣たちの言葉にもそれに従う終始静かな熱がこもっていた。

話は富山の米の美味しさにも及び、富山のロケ中、米が買えないおかかたちと気持ちを同じくするため、井上は自身に米断ちを課していたと、隣に座る室井が語っていた。一方で、井上本人からは(富山の美味しい)日本酒は断ち切れなかったと笑みをこぼしながら白状して笑顔を誘っていた。

熱量を醸し出しながらも一貫してイベントの空気は和やかで、スムーズに会話をまわす室井滋、会場に笑顔を広げる鈴木砂羽、そして主役として要所で短くも響く言葉を紡ぐ井上真央と、キャスティングの妙とチームワークの良さが光っていた。

[adinserter block=”3″]

大コメ騒動の背景に見えるおかかたちの想い

おかかたちとって家を守ること、それはつまり労働力たる男たちに、未来に繋がる子どもたちに腹いっぱい飯を食わせることだったのだろう。それは責任であったのかもしれないが、責任よりもっと根源的にある、家族を腹いっぱい食べさせたいという「想い」から生まれた行動にも思える。世の中の事情ではなく、自分のまわりの愛する人たちを幸せにすること、その結果の行動がこの「大コメ騒動」だったのだろう。

『大コメ騒動』 全国公開中  ©︎2021「大コメ騒動」製作委員会

富山出身の室井いわく地元では、多くの人が知ってはいるが表立って語られる歴史でもなかったと自身の経験を顧みながら話していた。鈴木砂羽が舞台挨拶最後の言葉で現状のコロナとある今の時代を、「周囲の流れや情報に左右されず、自分自身を振り返る良い機会」として捉えていると話していたが、「大コメ騒動」を起こした 100 年前のおかかたちも自分自身の価値観に従って立ち上がったのだと思う。

各々の「不要不急」が問われるこの時世、多くの人にとって本作はきっとこの時代を生き抜くヒントを見せてくれる「有要」であると信じている。もちろん感染対策を万全に、可能であれば劇場に足を運んでほしいと願う。本木監督の言葉を拝借すると「映画館は開いています」ので。

TOHOシネマズ日比谷ほか全国公開中

大コメ騒動ポスター
映画『大コメ騒動』(だいこめそうどう)

監督:本木克英(『釣りバカ日誌』『超高速!参勤交代』『空飛ぶタイヤ』『居眠り磐音』)
プロデューサー:岩城レイ子
プロダクション統括:木次谷良助
脚本:谷本佳織
音楽:田中拓人

出演:井上真央、室井 滋、夏木マリ、立川志の輔、左 時枝、柴田理恵、鈴木砂羽、西村まさ彦、内浦純一、石橋蓮司

配給/ラビットハウス、エレファントハウス
 ©︎2021「大コメ騒動」製作委員会

公式サイト:https://daikomesodo.com/
公式SNS: @daikomesodo