【上映作品一覧(5作品)】
『ドント・クライ プリティ・ガールズ!』(1970年)
ビート音楽のファンである不良青年たちは、うだつの上がらない日々を工場での労働に費やしている。ユリは不良青年のうちの一人と婚約しているが、とあるミュージシャンと恋に落ちる。ギグを開くと言う彼とともに、ユリは小旅行へ出かける。しかし、嫉妬深い婚約者と彼の不良仲間たちは執拗に二人を追いかけ・・・・。
ビート・ミュージックとともに、当時の息詰まるような社会の閉塞性が刻印された、音楽逃避行劇。
『アダプション/ある母と娘の記録』(1975年)
43歳のカタは工場勤務の未亡人。彼女は既婚の同僚と不倫関係にある。カタは子どもが欲しいのだが、愛人は一向に聞き入れない。ある日、カタは寄宿学校で生活する17歳のアンナと出会い、彼女の面倒を見ることにした。次第に二人は奇妙な友情を育んでいく。メーサーロシュの名を一躍世界に知らしめた記念すべき作品。
『ナイン・マンス』(1976年)
工場勤務の傍ら、農学を学んでいるユリは、工場の上司と恋に落ちる。ユリは彼に誠実な関係を望む一方、前夫との間に子どもがいることを隠している。やがて彼女の秘密は明らかになってしまうのだが、上司は子どもの存在を受け入れるだけの心の準備ができていない・・・・。
『マリとユリ』(1977年)
マリの夫は偏狭な男で、ユリの夫はアルコールに依存している。彼女たちはつらい夫婦生活を乗り越え、慰めを求め合う。互いの葛藤を知った二人は、それぞれの人生を歩むべく、ある決断をする。結婚生活に絡め取られる二人の女性の連帯を、厳しくも誠実なまなざしで捉えた精緻な秀作。
『ふたりの女、ひとつの宿命』(1980年)
1936年、ユダヤ人のイレーンは、裕福な友人・シルビアからある相談を持ちかけられる。シルビアは不妊に悩んでおり、胃レーンに自身の夫との間で子どもをつくってほしいと言う。そうして生まれた子どもに莫大な財産の相続が約束されたが、彼らの関係は悪化していく。その頃世界ではファシズムが台頭し・・・・。
幅広い文化圏の映画監督と協業をつづえけるイザベル・ユペールも、その最初期の重要な出演作として本作を挙げている。この後、メーサーロシュは「日記」四部作に代表される歴史映画を手がけていくが、その契機としても見逃せない意欲作。
『メーサーロシュ・マールタ監督特集上映』は、2023年5月26日(金)より新宿シネマカリテほか全国にて順次公開。
ハンガリーが誇る映画監督の一人であり、女性として初めてベルリン国際映画祭金熊賞に輝いたメーサーロシュ・マールタ。日本では劇場未公開だった彼女の珠玉の作品群の中から、5作品を上映する。1975年ベルリン国際映画祭金熊賞に輝いた映画『アダプション/ある母と娘の記録』、青春音楽映画の決定版『ドント・クライ プリティ・ガールズ!』(1970年)、ドキュメンタリー作家としてキャリアをスタートさせたメーサーロシュが、作為性や修飾を極限にまで削ぎ落した「真実」の記録『ナイン・マンス』(1976年)、結婚生活に絡めとられる二人の女性の連帯を、厳しくも誠実なまなざしで捉えた精緻な秀作『マリとユリ』(1977年)、イザベル・ユペール最初期の重要な出演作であり、見落とすことができない意欲作『ふたりの女、ひとつの宿命』(1980年)。
配給:東映ビデオ
© National Film Institute Hungary – Film Archive
2023年5月26日(金) 新宿シネマカリテほか全国にて順次公開