2025年4月11日にオープンしたテントシアター「渋谷 ドリカム シアター supported by Page30」。ここでは、6月2日から7月4日までの期間中、「Memories on Screen -映画人の棚からー本拝借-」というイベントを実施している。本記事では6月22日に行われた大九明子監督のトークイベントの模様をもとに本イベントを詳報する。

本イベント「Memories On Screen -映画人の棚から一本拝借-」は、映画監督、脚本家、俳優など様々なジャンルの映画人が映画を通じて夢を見た瞬間にフォーカスするもの。
各映画人が「幼き頃、夢見た映画」「若き日心を震わせた映画」「創作の原点となった映画」「プロとして新たな視点を得た映画」などをテーマに、1本の映画をセレクトし、その作品を上映。その後、上映した作品を通して自身の映画観や創作のルーツについて語るトークイベントを行う。
これまで、片山慎三監督が『母なる証明』、白石和彌監督が『遠近を抱えた女2』、清水崇監督が『男はつらいよ 寅次郎夕焼け小焼け』、岩井俊二監督が『ツィゴイネルワイゼン』など、第一線で活躍する映画監督たちが選出した映画を上映し、その作品への想いが語られてきた。本イベント期間中、ほぼ毎日ここでしか聞けない映画人が影響を受けた作品が上映され、その想いを感じることができるのだ。
夢の始まりの場所でまた夢を見よう
渋谷駅の東口か新南口を出て、渋谷警察署に向かい、その脇の坂を少し上がったその先に、黒いテント小屋が現れる。そこが「渋谷 ドリカム シアター」だ。ポップな模様に彩られたドラム缶とビールケースが並べられ、キッチンカーでは、食事とアルコールが提供されている。提灯と旗が飾られた、その空間はさながら祭りのようだ。


テントシアター内に入ると、この劇場が一風変わっていることに気づく。目の前の大きなスクリーンの真下には舞台が設置されており、人工芝が敷かれた床、その上にYogiboが並べられている。大九監督の言葉を借りると「まるで撮影セット」のようでもある。

まずはリラックスできるこの空間で映画鑑賞。この日、大九監督が選んだのは、ジョン・カサヴェテス作品『グロリア』だ。
カサヴェテスの妻であるジーナ・ローランズ演じるグロリアは、犯罪組織に惨殺された、ある一家の息子・フィルを偶然預かることになる。秘密を握ったグロリアとフィルがニューヨーク中を逃げ回る逃亡劇。タフなヒロインの活躍、子ども嫌いな彼女が次第に母性本能に目覚める姿が、かっこよくて愛おしい。
鑑賞後のトークショーでは、映画ライター・新谷里映氏による司会のもと大九監督が上映作品を選んだ理由、作る立場になって思うこと、映画制作における監督の指針などが語られた。
「とにかくジーナ・ローランズがカッコイイ。アート映画全盛期にこの作品でカサヴェテスと出会って、その自由な姿勢にシビれた。私もそうありたいと思った」と作品を選んだ理由を語る大九監督。

なかでも興味深かったのは、監督業を目指したきっかけの話。
「私はモノづくりがしたいけれど、何が向いているのがわからなかった。そんなとき、映画館に置いてあった”映画美学校 第1期生募集”チラシを手に取って応募したのが、この道に進んだのがきっかけです。だから映画はモノづくりができた場所。今も映画を作りたい人との出会いが嬉しすぎる」
また、最後には登壇者への質問コーナーが用意されていた。上映作品についてでも、監督が手がけた作品、また監督自身のことでも構わないようで、この日は、作品のキャスティング、劇伴音楽について、監督の経歴について質問があがり、大九監督はざっくばらんに答えていた。こんな話を聞くことができるのも、登壇者と観客が近い距離で開催される、本イベントでの醍醐味であり面白さだ。
さらにイベント終了後、先に述べたテント前の飲食スペースで、祭りの後の熱気を惜しむようかのように、監督のまわりに観客が集まり、話に花を咲かせていた。そこには、初夏の熱気とは違う非常に温かい空気が流れていた。

イベントの最後に、大九監督から未来ある人々、映画を愛している人たちへメッセージが、こう伝えられた。
「私にも夢はまだある。続けていく、続ける魂があれば十分幸せだと思う」
このテントシアターの総支配人を務めるのは、DREAMS COME TRUEの中村正人。今年でデビュー36周年を迎えたDREAMS COME TRUEは渋谷でその夢が始まった。デビューライブを行なった渋谷クラブクアトロから始まり、渋谷公会堂、NHKホール、国立競技場代々木第一体育館と渋谷の街を駆け上がっていった。
青山学院大学出身の中村正人は在学中から音楽活動をし、キャンパスから坂を下ってライヴハウスで演奏し、公園通りを駆け上がり、その夢を叶えた。その道の途中に「渋谷 ドリカム シアター」がある。
この場所には、夢の始まりである渋谷で、新たな夢を始めたい、そして叶えたい。そんな想いが詰まっている。あなたも夢の続きをまた始めてみてはいかがだろうか?

映画監督、脚本家、俳優など様々なジャンルの映画人が映画を通じて夢を見た瞬間にフォーカスし、「幼き頃夢見た映画」「若き日心を震わせた映画」「創作の原点となった映画」「プロとして新たな視点を得た映画」などをテーマに自身で1本の映画をセレクトし上映。そして、作品を通じて自身の映画観や創作のルーツについて語るトークイベント。
開催場所:渋谷 ドリカム シアター (渋谷区渋谷3丁目7-1「渋三広場」)
会期:2025年6月27日(金)〜7月4日(金)
6月27日(金) 犬童一心監督 登壇 『ジョゼと虎と魚たち』上映
6月28日(土) 石井克人監督 登壇 劇場版『エースをねらえ!』上映
6月29日(日) 前田哲監督 登壇 『トト・ザ・ヒーロー』上映
6月30日(月) 加藤拓也監督 登壇 『荒野にて』上映
7月1日(火) 行定勲監督 登壇 『欲望の翼』上映
7月2日(金) 齊藤工監督 登壇 『うんこと死体の復権』上映
7月3日(土) 玉田真也監督 登壇 『青いパパイヤの香り』上映
7月4日(日) 藤谷文子監督 登壇 『ピアニスト』上映
※いずれの回も17:30から上映、上映終了後登壇者のトークイベントを実施
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公式サイト shibuyadcttheater