『スター・ウォーズ』『ロボコップ』『スターシップ・トゥルーパーズ』シリーズなど、誰もが知る名作の特殊効果の数々を手掛け、その後のSF作品に計り知れない影響を与えた巨匠フィル・ティペット。その最新作映画『マッドゴッド』は、驚異の制作期間30年をかけ生み出された、地獄のディストピアを巡るダークファンタジー。
今から約30年前、ティペットは『ロボコップ2』(90)の撮影後に本作のアイデアを閃き、制作を始めた。だが、『ジュラシック・パーク』(93)で時代が転換点を迎え、業界が本格的にCGへ移行。「俺の仕事は絶滅した」とプロジェクトは中断された。
それから20年後。ティペット・スタジオの若きクリエイターたちが奇跡的に当時のセットを発見し、彼らの熱望により企画が再始動。さらに、クラウドファウンディングで世界中のファンからの応援も集まり、2021年のシッチェス映画祭で上映され狂喜乱舞を呼んだ。CGに駆逐された〈ストップモーションアニメ〉の巨匠が放つ、魂の一撃。
2021年に公開されたストップモーション・アニメ映画『JUNK HEAD』が記憶に新しい人は多いだろう。手掛けたのは、日本人の堀貴秀監督。本職の内装業の傍ら、たった一人で独学で作り始め、7年の歳月をかけ完成したという驚きのこの作品。海外映画祭で最優秀長編アニメーション賞を受賞するなど絶賛され、日本で逆輸入公開されるや、大きな話題を呼び、ミニシアターから全国へのシネコンへと拡大公開された。
「主人公が荒廃した地下世界に降りていき冒険を繰り広げる」というダークな世界観や、グロ可愛いキャラクター造形、ともに長い年月をかけて手作りされたストップモーションアニメであるといった点で、『マッドゴッド』と『JUNK HEAD』は共通点が多い。
そこで今回、フィル・ティペット、堀貴秀の両監督による、ストップモーション・アニメの巨匠と新鋭、夢の日米対談が実現。オンラインでたっぷりと時間をかけ、お互いへのリスペクトや作品制作にかける思いなどが語られた。
『JUNK HEAD』を早い段階ですでに観ていたというティペット監督は、「あなたを誇りに思います。私たちは同じ卵から生まれてきたのではないでしょうか。」と、若き同志に向けて最大の賛辞を送る。
また、堀監督は『マッドゴッド』を数年前のキックスターター(クラウドファンディングを提供するアメリカの会社)での短編から観ていたそうで、「こんなに自分と似た世界観を持っている人がいるのかという驚きと、ティペットさんがこれまで関わってきた傑作映画の数々が自分の感性の一部になったのだと懐かしい気持ちになりました。」と、SF映画の歴史を作ってきた〈特殊効果の神〉との対面に感激の様子。
2人は、映画制作に欠かせない資金集めや、長年かかった制作のヒストリー、実物の人形や映像の質感、撮影方法についてなど、ストップモーション・アニメのクリエイターだからこそ通じ合える様々なテーマで、意気投合しながら話に花を咲かせた。
この対談の模様は、上映劇場とWEB通販「ロングライドストア」で12月2日(金)公開初日より販売されるパンフレットに収録されている。さらに、配給会社ロングライドの公式Youtubeチャンネルでも一部映像が公開された。
また、堀監督は『JUNK HJEAD』の続編『JUNK WORLD』制作資金補強プロジェクトのクラウドファンティングを実施中。
人類最後の男に派遣され、地下深くの荒廃した暗黒世界に降りて行った孤高のアサシンは、無残な化け物たちの巣窟と化したこの世の終わりを目撃する。
監督:フィル・ティペット
出演:アレックス・コックス
配給:ロングライド
©2021 Tippett Studio
2022年12月2日(金) 新宿武蔵野館、ヒューマントラストシネマ渋谷、池袋シネマ・ロサ、アップリンク吉祥寺ほか全国公開
公式サイト longride.jp/mad-god/