アカデミー賞外国語映画賞受賞作『ヒトラーの贋札』を監督したステファン・ルツォヴィツキーの最新作で、ロカルノ国際映画祭で観客賞を受賞した映画『ヒンターラント』のメイキング映像が公開された。
監督は実録歴史ミステリー『ヒトラーの贋札』で第80回アカデミー賞外国語映画賞を受賞した名匠ステファン・ルツォヴィツキー。今作では同じく歴史の暗黒時代に焦点を当てながらも、全編ブルーバックによる撮影で、ダークファンタジーのような世界観を立ち上らせる。
残酷な戦争の悲劇を、寓話的にそして絵画的に描き出した美しい悪夢のような映像は多くの観客を魅了。ロカルノ国際映画祭では観客賞を受賞、母国最高の栄誉であるオーストリア映画賞で6部門ノミネート、美術賞を受賞するなど高い評価を獲得した。
物語は、敗戦後の長い捕虜生活ですべてを失った主人公の元刑事ペーターが、ようやくたどり着いた故郷でかつての戦友たちを標的にした連続殺人事件に直面するところから始まる。心身共にボロボロになった主人公の目に映る狂った世界はどのように表現されたのか。
監督によると独創的な映像については「戦争に破れ世界全体がおかしくなってしまったと感じている主人公の認知の歪みを視覚的に表現している」と同時に「デジタル版の『カリガリ博士』を描こうと言う試み」だったのだという。
この度公開されたメイキング映像では、全編ブルーバックで行われた撮影風景が、美しい悪夢のような映像世界に変貌していく様を見ることができる。全てを失い世界全体がおかしくなってしまったと感じている主人公の目から見た歪んだ世界を描くためにVFXを使用したことについて監督は「VFX技術がスーパーヒーロのためにだけ存在しているのではなく、本気で向き合えば全く新しい美的コンセプトそのものになる」と語る。
映画『ヒンターラント』は、2023年9月8日(金)より全国ロードショー。
第一次世界大戦終結後、長く苦しいロシアでの捕虜収容所生活から開放され、ようやく故郷にたどり着いた元刑事ペーターとその戦友たち。しかし帰国した彼らを待ち受けていたのは変わり果てた祖国だった。敗戦国となり皇帝は国外逃亡。愛する国と家族を守るために戦った彼ら兵士たちに対するねぎらいの言葉すらない。そして帰宅した家に愛する家族の姿はなく、行き場をなくすペーター。そんな最中、河原で奇妙な遺体が発見される。被害者はペーターのかつての戦友だった。遺体には相手に苦痛を与えることを目的に仕掛けられた拷問の跡、そしてその痕跡は、犯人も同じくペーターと同じ帰還兵であろうことを告げていた。ペーターは自身の心の闇と向き合うために、自らの手で真相を暴くべくボロボロの心身に鞭打って動き始めるのだが‥‥。
監督:ステファン・ルツォヴィツキー
出演:ムラタン・ムスル、リヴ・リサ・フリース、マックス・フォン・デア・グレーベン、マーク・リンパッハ、マルガレーテ・ティーゼル、アーロン・フリエス
配給:クロックワークス
🄫 FreibeuterFilm / Amour Fou Luxembourg 2021
2023年9月8日(金) 新宿武蔵野館ほか全国ロードショー