第98回アカデミー賞で、作品賞、監督賞、主演女優賞などの主要部門含め合計8部門にノミネートされた、映画『ハムネット』。このたび、アカデミー賞衣装デザイン賞にもノミネートされた衣装デザイナーのトゥルジャンスカが、本作でジェシー・バックリーが纏う真紅ドレスの秘密を語った。

Netflixシリーズ「ストレンジャー・シングス 未知の世界」や、A24製作の『X エックス』『Pearl パール』などでも知られる衣装デザイナーのトゥルジャンスカは、本作の衣装デザインの着想についてこう説明する。「思い浮かんだのは鼓動する心臓、生命力と血で満ちた筋肉でした。彼女は自然と有機的につながり、ベリーのように慎重に扱わなければ毒にもなりうる存在です」。アグネスが初登場する時のベリーレッドやオレンジ、さび色といった鮮烈な色彩は、物語の進行とともに灰紫やプルーンブラウン(深みのある濃い黒紫色)へと変化し、癒えない傷のように、最後には深く成熟した赤へと移ろっていくという。


素材面でも徹底したコンセプトが貫かれている。アグネスの大地との結びつきを表現するため、衣装には主に植物繊維の生地を採用。リネンは歴史的背景とキャラクター性の双方に適合する素材として用いられ、さらに本物の樹皮から作られた有機的なテキスタイルも取り入れられた。重ね着の構造は時代考証に基づきながらも、着こなしには現代的な感覚が与えられている。
あわせて公開された本編映像は、恋焦がれるアグネスの視線を引き留めようと不器⽤に接触するウィリアム・シェイクスピアの姿を捉えた印象的な⼀幕。そのなかでひときわ⽬を奪うのが、緑豊かな⾃然の中に鮮烈に浮かび上がるアグネスの〈真紅の⾐装〉だが、⽣命⼒と痛みの記憶を同時に感じさせるこのドレスには、キャラクターの内⾯を読み解くための緻密な設計が込められている。アグネス役のジェシー・バックリーは、この⾚いドレスについて「まるで開いた傷⼝のような⾊で、時間をかけて縫い上げられ、いくつもの⽳が繕われています。誰にも⾒えないほど⼩さなものまで」と語り、鷹匠、薬草採集者、治療師として⾃然と結びつく彼⼥の精神性を象徴する⾐装であることを明かす。
トゥルジャンスカは語る「整った装いのシェイクスピア家の人々と比べると、彼女は野性的で反抗的、パンクな印象を持っています。外見は変化しますが統一感を保ち、まるでムードリングのように、一着のドレスが自然に彼女に寄り添って変化していくように見せることが重要でした」。視覚的なインパクトだけでなく、キャラクターの時間や感情の変遷までを織り込んだ衣装表現。真紅のドレスの意味を知ることで、本編の見え方もまた大きく変わりそうだ。

映画『ハムネット』は、2026年4月10日(金)公開。

舞台は16世紀イングランドの小さな村。薬草の知識を持ち、不思議な力を宿したアグネス・シェイクスピアと、作家としてロンドンで活動する夫ウィリアム・シェイクスピア、そして3人の子どもたちが描かれる。夫がロンドンで働くため、父親不在のなかで子どもたちを守り奮闘するアグネスだったが、やがて不運にも11歳の息子ハムネットを失う。
監督・製作総指揮:クロエ・ジャオ
製作:スティーヴン・スピルバーグ、サム・メンデス
出演:ジェシー・バックリー、ポール・メスカル、エミリー・ワトソン、ジョー・アルウィン
配給:パルコ ユニバーサル映画
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2026年4月10日(金) 公開